1. フェイクニュースの氾濫、テレビ・ドキュメンタリーは信用きるのか?

マスコミ報道・世論誘導に関連する記事

2017年12月06日 (水曜日)

フェイクニュースの氾濫、テレビ・ドキュメンタリーは信用きるのか?

フェイクニュースという言葉が市民権を得てきた。フェイクニュースは、偽りのニュースという意味である。虚像を流すことで、世論を誘導するのが目的である。

実は、フェイクニュースは過去にも大きな問題になっている。たとえば朝日新聞による珊瑚事件である。この事件は、1989年に朝日のカメラマンが自分で珊瑚に傷をつけて、その写真を撮影し、環境破壊をテーマとした新聞記事を捏造した事件である。

1993年には、NHKスペシャル『奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン』にやらせが含まれていたことが発覚した。取材に同行していたフリーのフォトジャーナリストに高山病になった演技を強要して、それを撮影し、いかに過酷な取材をしたかを強調するために、作品の一場面に組み込んでいたのだ。詳細については、理不尽の演技を強いられたフォトジャーナリストが著した『ムスタンの真実―「やらせ」現場からの証言 』に詳しい。

知人の放送関係者によると、テレビのドキュメントでは、やらせは半ばあたりまえになっているという。発覚していないだけで、日常茶飯なのだという。と、いうのもテレビ番組の制作費が乏しく、時間をかけて事実を記録するだけの経済的・時間的な余裕がないからだ。テレビ番組の制作しているのは、たいていテレビ局の下請けの制作会社である。

◇事実の誇張

このところテレビは盛んに朝鮮をバッシングしている。そのための映像の量は、膨大になっている。しかし、朝鮮の漁船が日本列島の日本海側に次々と流れ着いている映像などは、簡単に捏造できるのだという。

「100%ウソの情報を流しているとは思えないですが、ほんの小さな事実をあたかも大事件のように誇張している可能性は高いです」(放送関係者)

朝鮮に対するバッシングが進む背景で、日本政府はどんどん軍事予算を増やしている。笑いが止まらないのは、日米の軍事産業である。朝鮮半島の問題が長引けばながびくほど、軍事産業の懐が潤うしくみになっているのだ。そのための財源は、増税でまかなう。

◇中野重治の理論

こうした状況の下で、日本のメディアが流す情報をどの程度信用すべきなのか不透明な部分が広がっている。基本的に日本のマスコミ情報は信用してはいけないというのが、筆者の見解だ。

特にあやしいのは世論調査である。JNNの世論調査(2日、3日に実施)によると、安倍内閣の支持率は、52.7%で、不支持の45.7%を大きく上回ったという。まず、ありえない数字である。データの裏付けが公開されないのだから、フェイクニュースの可能性を強く疑うべきだろう。

朝鮮にさまざまな問題があることは否定しない。しかし、テレビ映像には、かなりの誇張がある可能性も高い。金正恩の画像にしても、もっともイメージが悪いもの、あるいは悪党のイメージをかき立てるものが使われていることは、まず、間違いない。

筆者は、特に映像については注意している。カメラの使い方やその後の編集でどうにでもイメージ操作できるからだ。しかも、映像は人間の脳に直接的な強い印象を与える。洗脳や世論誘導には極めて有効だ。

作家の故・中野重治が、確か『日本語について』という本の中で、書き言葉の方が話し言葉や映像よりも真実を見極める際の道具としてより有効だという意味のことを論じていた。中野によると、話し言葉には常にアクセントや声の強弱、それに身振り手振りが伴っているので、それによって視聴者が騙されることが多いのだという。そのために、なんとなく立派に聞こえた演説を文章に「翻訳」してみると、実につまらない内容であることも少なくないという。

これに対して書き言葉は、アクセントもなければ、声の強弱も、身振り手振りの助けも借りられない。それゆえにある状況を書き言葉に「翻訳」してみると、物事の本質が浮かび上がりやすいのだという。中野は、書き言葉の力で、事実をひとつひとつ確認して、真実を見極める作業の意義を強調する。

正論である。が、書き言葉を使う側がフェイクニュースを意図していれば、中野重治が唱える理想論も機能しなくなる。日本のメディアは、いまそういう危機にあるのだ。