2017年08月31日 (木曜日)
Jアラートにみる政府によるメディアコントロール、大本営と同じ構図、北朝鮮問題を考える6の視点
北朝鮮のミサイル発射を逆手に取って、安倍内閣は「反北朝鮮」の世論づくりに懸命だ。そのためにマスコミが動員されている。しかし、冷静に検証しなくてはならないポイントがいくつかある。
①北朝鮮のミサイルが日本の領域に落下する確率はどの程度あるのか? 30日に発射されたミサイルの場合、最高高度が500キロ。宇宙情報センターによると、人工衛星の高度が100キロから40000キロだから、人工衛星並の高度で飛行したことになる。
安倍首相は発射された時点から、軌道を把握していたわけだから、最初から日本に落下しないことは分かっていたはずだ。
ミサイルが日本に落下する可能性はなかった。むしろオスプレイの落下率の方が高いのではないか。
②JアラートがテレビやPC画面で自動表示されたが、これはメディアを政府が完全に掌握している証ではないか。政府が、たとえばテレビ局に情報提供するのは自由だが、それをどう報じるかは各局が決めることである。ジャーナリズムの基本原則がすでに完全に崩壊している。報じない選択もあるのだ。
しかも、安倍内閣は、Jアラートが出た場合、地下や丈夫な建物に隠れることを奨励している。それもメディアがそのまま垂れ流している。いわば戦中の大本営発表を基本とした報道と同じだ。
冷静に考えると、太平洋戦争の時代に、竹槍で「米英」を駆逐しようという発想に多くの人々が洗脳された状況に類似していないか。人間は、頭で考えるよりも、実際に行動することで、より深く思考を形成する傾向がある。実際に、地下へ避難した人は、その後も北朝鮮に対して不信感を抱くことになる。
いわば洗脳が国家レベルでドラスチックに進行しているのである。ほとんどの人がそれに気づいていない。マスコミも少数の例外を除いてそれに警鐘を鳴らさない。
③韓国軍と米軍が空爆の軍事訓練を断行しているが、これは問題視しなくてもいいのか。「挑発」には該当しないのか?米韓の軍事訓練は容認され、しかも、米国に至っては世界の核の約5割を保有しているが、これらの兵器は廃棄しなくてもいいのか?国連安保理は、公平性に欠けている。
北朝鮮だけを批判する人々は、北朝鮮が何を目的にミサイル開発に国会予算を投じているのかを説明すべきである。それは防衛である。貧しい国は、軍事費はなるべく削減したいというのが本音なのだ。
たとえばニカラグア政府は、米国に支援された反政府ゲリラ(通称コントラ)と
の内戦(1980年代)で、国家予算の約5割を戦争に投入せざるを得なかった。その結果、国民の生活水準が極めて低下し、1992年には、革命政権が選挙に敗北して、一次的に下野する事態も起こった。
日米韓が北朝鮮をターゲットにした軍事シフトを敷いているから、北朝鮮はやむなくミサイル開発を進めているのである。ある意味では、1962年のキューバ危機と同じ構図である。貧しい国の政府は、軍事よりも国民の生活水準を上げることで、政権の安定を図りたいのが本音なのだ。
※キューバ危機は、1962年10月から11月にかけてキューバに核ミサイル基地の建設が明らかになったことからアメリカ合衆国がカリブ海で海上封鎖を実施し、アメリカ合衆国とソビエト連邦とが対立して緊張が高まり、全面核戦争寸前まで達した危機的な状況のこと。(Wikipedia)
④かりに北朝鮮が日本をターゲットにしてミサイルを発射した場合、撃墜は可能なのか。これについては、専門家の間でも両論があるようだ。
⑤日米の軍事産業にどの程度の国家予算が流れ込んでいるのか。これについても検証する必要がある。
⑥1992年のPKOから始まり共謀罪までたどりついた日本の軍事大国化。その中で対北朝鮮政策を再検証する必要があるのではないか。それは北朝鮮についての世論が意図的に誘導されていったプロセスでもある。
いまや汚職の疑惑があり、北朝鮮を敵視する首相が国会に堂々と居座り、一部の人々からは、「はやく北朝鮮をつぶしてしまえ」という声もあがっている。ファシズムの前夜である。
韓国や中国の人々の感情に配慮しない歴史教科書の改ざん問題も含め、日本側の対北朝鮮政策も再検証する必要があるのではないか。