1. 北朝鮮に関する「印象操作」に要注意、防衛費が湯水のように日米の軍事産業へ流入する仕組み

マスコミ報道・世論誘導に関連する記事

2017年08月28日 (月曜日)

北朝鮮に関する「印象操作」に要注意、防衛費が湯水のように日米の軍事産業へ流入する仕組み

2018年度の防衛費が過去最高になる見通しだ。日米の軍事産業界にとっては、願ってもない話だ。これは意図的に計算された世論誘導の果実といえよう。

防衛省は2018年度予算の概算要求で、過去最大の5兆2551億円(17年度当初予算比約2.5%増)を計上する方針を固めた。北朝鮮の弾道ミサイル発射技術が進展していることを踏まえ、大気圏外でミサイルを迎撃する海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を陸上に置く新システム「イージス・アショア」の導入費を盛り込む。(毎日新聞)

「印象操作」という言葉が、第193回国会(2017年度)で市民権を得た。この言葉の生みの親は、改めていうまでもなく、安倍晋三首相である。森友学園や加計学園についての報道を指して、「印象操作」だと繰り返したのである。なぜ、このような表現を選んだのかは知らないが、「印象操作」とは、端的に世論誘導のことである。

◇北の上陸作戦はあり得ない

現在、安倍首相を柱に、日本で最も大がかりに進行している印象操作は、北朝鮮に関するものである。もっとも筆者は北朝鮮を自分の目で見たことがないので、確定的なことは言えないが、マスコミがつくりだす「北」のイメージと、実態はかなり異なっていると推測している。虚像がある可能性が高い。

北朝鮮を核開発、ミサイル開発に向かわせているのは、日韓米の軍事行動である。北朝鮮が、たとえば日本に上陸作戦を展開し、陣地を形成して、東京を占領する計画を立てていることはまずありえない。

現在、上陸作戦を展開する能力があるのは、唯一、米軍だけである。

韓国軍と米軍が、合同で軍事演習を繰り返したり、沖縄やグアムに北朝鮮を攻撃するためのミサイルや戦闘機が配備されているから、対抗処置として北朝鮮は、ミサイル開発・核開発を進めているのである。

ところが日本のマスコミは、このような構図をまったく逆立ちさせて捉えている。

かりに日本列島が名古屋あたりを境に、東と西に別れ、東が親米国で、西が共産圏だとする。そして東が静岡あたりで、定期的に日米軍事演習を繰り返せば、西は対抗手段を取らざるを得ない。

同じ構図のことが今、朝鮮半島で起こっているのだ。

ちなみに米国という国は、過去に繰り返し繰り返し他国に対して軍事介入を断行してきた歴史がある。戦後のラテンアメリカだけに焦点を当ててみても、次のような侵攻や軍事介入の例がある。

1954年 グアテマラ
1961年 キューバ
1965年  ドミニカ共和国
1973年 チリ
1979年  ニカラグア・エルサルバドル・グアテマラ
1983年 グラナダ
1989年 パナマ

その他、前世紀まで、麻薬の取り締まりを口実に、パナマの米軍基地からボリビアなどに米軍がよく投入されていた。

現在は、ベネズエラが米軍侵攻の危機に直面している。

このような歴史を持つ米国を北朝鮮が警戒するのは、むしろ当然ではないか。

◇故意にイメージが悪い動画を使用

日本のメディアは、北朝鮮に関連した政治ニュースを流すときには、特定の画像を流して印象操作をする。たとえば、バルコニーに立って群衆に手を振っている金正恩の画像だ。ロボットの兵隊を連想させる旧ソ連スタイルの行進風景である。とにかく極力イメージが悪いものを使う。

もちろん北朝鮮の独裁政治や、権力の世襲制度には大きな問題がある。それはそれとして別に指摘すべき大きな問題なのだが、北朝鮮の実像を故意にゆがめて伝える行為は、ジャーナリズムの原則からすると問題が多い。

◇フリーダム・ファイターズ

ちなみに筆者が最初に、メディアによる世論誘導を自覚したのは、1980年代の初頭である。当時、筆者は米国に在住していたのだが、米国の主要メディアは、ニカラグアのサンディニスタ政権を、テロリストと報じていた。当時のレーガン大統領は、反政府ゲリラを「フリーダム・ファイターズ」と呼び、メディアも彼の発言を垂れ流していた。

ところが1985年に、筆者が実際にニカラグアへ行ったところ、実態はマスコミ報道とはかなり異なっていた。ニカラグアは、左派系メディアが伝えていたような新生の「楽園」ではなかった。同時に言論の弾圧なども一切なかった。サンディニスタ政権に異議を唱える人々に対しても、自由に取材することができた。ニカラグアの人々が最も渇望していたもののひとつは、言論の自由であったからだ。

北朝鮮に関するメディア報道には、注意しなければならない。冷静に見なければならない。露骨な「印象操作」により、われわれの税金が湯水のように日米の軍事産業へ投入される仕組みになっている可能性が高いからだ。