1. 北朝鮮のICBM、北の友好国・キューバのプレンサラティナ紙はどう報じているのか、日本の報道よりも客観的

マスコミ報道・世論誘導に関連する記事

2017年08月15日 (火曜日)

北朝鮮のICBM、北の友好国・キューバのプレンサラティナ紙はどう報じているのか、日本の報道よりも客観的

北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発に成功したことで、米国と北朝鮮の緊張が高まっている。このニュースを日本の大半のメディアは、「北脅威論」の視点から伝えている。しかし、北朝鮮の友好国のメディアは、そのような報道をしていない。

たとえばPrensa Latin(キューバ)は、「トランプが北朝鮮に対する挑発を強める」(8月10日)という見出しの記事を掲載している。「誰も見たことがないこと起きる」というトランプの発言を受けての記事である。■出典

その数日前、7日付けの同紙は、フィリピンの首都マニラで、6日から8日にかけて開かれた東南アジア諸国連合の会議で、北朝鮮が「米国以外の国に対しては核兵器は使用しない。しかも、米国が北朝鮮を攻撃した場合に限る」とする立場を明らかにしたこと伝えている。しかし、筆者の知る限り、日本のマスコミは、この重要な事実を伝えていない。■出典
さらに事実、Prensa Latinによると、中国とロシアは米国に対しても苦言を呈している。

一方、NHKニュースは、14日、北朝鮮で女性たちが反米集会を開いたことを報じている。その中で、ある女性のコメントを紹介した。内容は、「自分は包丁をもって夫と共に米軍に立ち向かう」というものだった。映像と音声に記録されているわけだから、コメントの内容に間違いはない。が、疑問は、この女性の声が北朝鮮の大半の女性の声なのかという点である。

おそらく朝鮮民族に多い極めて興奮しやすい人の特殊なコメントである。それを全体の声と勘違いさせる手口は、世論誘導の典型にほかならない。安倍首相の言葉を借りれば、「印象操作」である。

◇報じられていること、報じられていないこと

新聞研究者の故新井直之氏は、『ジャーナリズム』(東洋経済新報社)の中で、報道の見方について、次のような方法論を展開している。

 新聞社や放送局の性格を見て行くためには、ある事実をどのように報道しているか、を見るとともに、どのようなニュースについて伝えていないか、を見ることが重要になってくる。ジャーナリズムを批判するときに欠くことができない視点は、「どのような記事を載せているか」ではなく、「どのような記事を載せていないか」なのである。

Prensa Latinが報じているような事実を日本のメディアは報じていない。さらに北朝鮮の問題を考える際に、不可欠な次の情報を故意に隠している。それは、ストックホルム国際平和研究所が公表している「核兵器保有国の保有数ランキング%」である。

1位 ロシア 47%
2位 アメリカ 45%
3位 フランス 1.9%
4位 中国 1.6%
5位 イギリス 1.3%
6位 パキスタン 0.8%
7位 インド 0.7%
8位 イスラエル 0.5%
9位 北朝鮮 0.06%
(2017年最新版)

上記の数字をみるだけでも、北朝鮮が先制攻撃を仕掛ける事態など起こり得ないことが分かる。

客観的に見ると、世界の核兵器の45%を占める米国が、北朝鮮に対して核開発の中止を求める構図自体がおかしい。非核保有国が北朝鮮に警告するのであれば、道理がある。説得力もある。が、米国が核問題で北朝鮮を非難しても説得力はない。

ちなみにトランプ政権は、近年、北朝鮮だけではなく、キューバやベネズエラに対しても、挑発行為を強めている。歴史的に見れば、チリやニカラグアなどラテンアメリカ諸国に対する軍事介入を繰り返してきた。

◇原子力発電所は無防備に放置

北朝鮮脅威論の背景に何があるのだろうか?
答は簡単で、日米の軍事産業への国家予算の投入という政策の正当化である。これが最大の目的である可能性が高い。メディアを使って危機感を煽り、軍事大国化をはかり、軍事産業を繁栄させる「死の商人」の構図である。

極右の人々を除いて、おそらくだれも北朝鮮が米国や日本に先制攻撃を仕掛けるなどと考えてはいない。本当に政府が危険性を感じているのであれば、まず、原子力発電所の近くに迎撃ミサイルを配置するだろう。が、その気配はまったくない。攻撃そのものが有り得ないからだ。

北朝鮮の軍事開発は、世界のあちこちで行われているミサイル開発のひとつに過ぎない。脅威論を煽って、軍事産業に貢献しているのがNHKなどのマスコミなのだ。