2017年05月16日 (火曜日)
共謀罪についてのNHKの世論調査、露骨な情報操作で安倍政権に奉仕
次に示すのは、NHKによる最新の世論調査の結果である。共謀罪に関するものだ。
賛成:25%
反対:24%
どちらとも言えない:42%
設問は次のようになっている。
「政府は、テロなどの組織犯罪を未然に防ごうと『共謀罪』の構成要件を改めて、『テロ等準備罪』を新設する法案を国会に提出し、審議が行われています。
与党側は、テロ対策は急務だとして今の国会での成立を目指していますが、民進党や共産党などは1億総監視社会になりかねないなどとして、廃案に追い込みたい考えです。」
読者はこの設問が、どこか変だと感じないだろうか。筆者は恣意的に「賛成」の数値を上げようと意図した設問ではないかと考えている。
◇設問のどこが誤りなのか?
この設問であれば、共謀罪を設ける法案は、テロを未然に防ぐことが一次的な目的ということになってしまう。しかし、対象になるのは、テロだけではない。277の犯罪(91の法律)が対象になる。厳密にいえば、当初はテロは対象外だったのだ。
日本の刑法では、犯罪を実行した段階で摘発の対象とするのが大原則である。摘発の段階には、「実行」、「未遂」、「予備」、「共謀」の4レベルがあるのだが、「実行」した時点での処罰が基本原則である。
しかし、悪質な犯罪については、例外的に「未遂」や「予備」、それに「共謀」の段階でも取り締まることができる。ところが政府案は、277の犯罪についても、「共謀」の段階で取り締まれることを可能にするものなのだ。
共謀罪の法案に反対している野党が最も問題にしているのは、この点なのである。しかし、設問ではそれを巧みにごまかしている。
設問そのものが不正確でねじ曲げられているのだ。
筆者はNHKの記者が無知だから、このような設問になったのではないと思う。NHKの記者になれるレベルの人に共謀罪のねらいが分からないはずがない。政府の「広報部」として、世論誘導の役割を担っているのである。