1. 高校生の重労働を美談に描くNHK報道「旅立ちの春」、知られざる治安維持ビジネス=国策プロパガンダの典型

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2017年04月25日 (火曜日)

高校生の重労働を美談に描くNHK報道「旅立ちの春」、知られざる治安維持ビジネス=国策プロパガンダの典型

NHKが4月23日に「目撃!にっぽん 高校生ワーキングプア 『旅立ちの春』」という番組を放映した。NHKの番組案内によると次のような内容だ。

6人に1人の子どもが相対的貧困とされる日本。今、家計を支えるために働かざるを得ない「高校生ワーキングプア」が増えている。幼い妹や弟のためにアルバイトで働き詰めの日々を送る女子高生は、家族のために大学をあきらめて専門学校へ進学することを決断した。一方、アルバイトをしながら兄弟2人で生きてきた男子高生は、春、そろって就職。助け合って生きてきた日々から卒業する。高校生ワーキングプアの旅立ちの春を描く。

この番組をぼんやりと視聴していると、「立派な高校生もいるものだ」「わたしも頑張ろう」という感想を抱くだろう。事実、この番組に登場していた高校生たちは、模範的な人物である。この点に異論はない。

しかし、なぜ憲法で保障されているはずの教育を平等に受ける権利が侵害されているのかという点に、番組はまったく言及していない。その原因を究明するのがジャーナリズムだが、NHKはもっとも肝心な点を避けているのだ。

そのために高校生による重労働が美談のように感じてしまう。

◇観念論による国策プロパガンダ

意外に認識されていないが、実はこれが見えざる世論誘導のかたちなのだ。人間の思考を観念論(心がけさえよくすれば、運命は開けるという観念)で染め上げてしまう洗脳なのだ。『旅立ちの春』に感動した人は、自分も熱心に働けば、道が開けると感じるだろう。それは真理の一面もあるが、貧困から脱出するための根本的な解決方法ではない。人類全体の救済にはつながらない。

根本的な解決は、貧困の客観的な原因が何かを追求して、そこへ政治のメスを入れることである。端的にいえば、小泉政権の時代から急進的に導入された新自由主義の経済政策を改めることである。これが格差社会や貧困の原因になっているのだ。

社会問題の原因を客観的に把握させないためには、世論誘導が必要だ。しかも、世論誘導とは認識できない巧みな方法で、日常のあらゆる場面で国民を洗脳していく必要があるのだ。それがメディアの役割になっている。

国策プロパガンダというのは、なにも政府広報でマイナンバー制度や消費税の税率アップをPRすることだけではない。メディアを通じて日常的に行われているのだ。そは空気のような存在で、まったく認識できないケースの方がはるかに多いのだ。「根性と努力」をテーマとしたスポーツ・ドキュメンタリーもそのひとつである。

その役割を先頭に立って担っているがNHKにほかならない。だから筆者は、NHKとは契約していない。自分の生活費を切り詰めて「寄付」する資金が、NHK職員の高級待遇とその見返りとしての国策プロパガンダに使われることに我慢できないからだ。

◇根拠のない中国・北朝鮮脅威論

中国・北朝鮮の脅威論にも同じ世論誘導の原理が働いている。日中両国は貿易依存度がお互いに極めて高い。いまや多くの日本企業が中国へ進出している。
中国から日本への観光客も多い。

その中国を日米が武力攻撃できるはずがない。日本の財界がこれまでたびたび嫌中嫌韓の安倍首相に苦言を呈してきたのも、中国に配慮している結果にほかならない。日中戦争など、実はありえないのだ。

北朝鮮問題にしても、日本の報道はかなりおかしい。このところ米軍による北朝鮮攻撃の可能性を示唆する報道が増えたが、ある軍事専門家の話によると、他国に侵攻するには、空母が4隻から6隻必要だという。1隻ではありえないという。それが常識だそうだ。

とすればなぜ中国や北朝鮮の脅威論が日本で盛んに展開されるのだろうか。

答えは簡単で安倍政権が、軍事大国化の政策を推し進め、三菱重工などの軍事産業に大儲けさせようと考えているからだろう。また、現在、国会で審議されている戦争法案のひとつ、共謀罪を成立させたいからにほかならない。

これらの国策プロパガンダに日本のメディアの多が加担している。