1. トランプ大統領のバッシングとメディアによる大がかりな世論誘導

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2017年01月26日 (木曜日)

トランプ大統領のバッシングとメディアによる大がかりな世論誘導

トランプ大統領が誕生した。メディアで、トランプ現象についての解釈が飛び交っているが、この問題は複雑なようで、実は極めて単純だというのがわたしの意見だ。

結論を先に言えば、欧米から日本にいたるまで先進工業国が押し進めてきた新自由主義=構造改革と、それに連動したグローバリゼーションがもたらした弊害の解決を、有権者が極右的な政策に求めた結果にほかならない。もともと極右政党は、自国の権益を最重視するので、新自由主義やグローバリゼーションとはなじまない。

ヨーロッパにおける極右政党の台頭もまったく同じ理由による。

◇市場の急拡大とビジネス環境の変化

しかし、ビジネスは国境なき時代に入っている。企業は多国籍化して、市場も世界規模に拡大している。彼らが求めているのは、一国の市場だけではない。
国境を取り払った想像もできない世界市場をターゲットにしているのだ。安倍首相が外遊を繰り返しているのは、その現れにほかならない。

日本が軍事大国化を進めている背景にも、多国籍企業の防衛部隊を派遣する体制を構築する必要に迫られているからだ。これは財界の要請である。軍事大国化と連動するかたちで、ビジネスの舞台を世界規模に拡大しているのだ。

米国も事情は同じだ。

こうした状況の下で、トランプ大統領が企業の海外投資を規制するのは極めて難しい。政治を牛耳っているのは、実は財界である。メディアがトランプ氏をバッシングしはじめたのも、基本的にはそれが財界の意向であるからにほかならない。今、メディアによる世論誘導がかなり大がかりな規模で行われている可能性が高い。

日本で新自由主義の導入が進んでいる時期、森善郎政権が2000年4月に誕生し、たちまちメディアによるバッシングで、無能な人物のレッテルを張られ、下野させられたことがあったが、その本当の背景は、森善郎政権が新自由主義=構造改革にあまり積極的ではなかったことにある。その結果、森氏は外野へ追いやられ、それに代わって、水星の如く小泉純一郎氏が登場し、財界の要望に応えてドラスチックに新自由主義=構造改革を導入したのである。

その結果は、改めて言うまでもなく、格差社会と貧困の登場である。

◇2大政党制の悲劇

なぜ、米国の人々は新自由主義とグローバリゼーションが生み出した矛盾の解消を極右のトランプ氏に期待したのだろうか。答えは簡単で、米国の政治は保守党による2大政党制で、新自由主義=構造改革の失敗を左派の経済政策に委ねる選択肢がないからだ。たとえ左派政党が存在したとしても、ソ連の崩壊に象徴されるように、社会主義が支持される環境がない。

新自由主義の御三家といえば、レーガン、サッチャー、ピノチェトである。新自由主義が登場した時、メディアにより、それが斬新な理論のようなPRが行われ、日本では軽薄にも小沢一郎氏らが、構造改革=規制緩和を叫びはじめた。それが何を引き起こすか、メディアも小沢氏も理解していなかった。だから、小沢氏は現在は新自由主義とは一定の距離を置いているのである。本来は、その責任の重大性に鑑みて、政界を去るべきなのだが。

わたしはグローバリゼーションそのものは、必要だと思うが、その背景にある新自由主義の理論と思想は誤っていると考えている。海外投資についての国際的な規制や取り決めを構築したうえで、企業の海外進出を進めなければ、投資先の国でも大きな経済格差が広がり、結局は紛争の原因となってしまう。

まもなく誰が政治やメディアを牛耳っているのかが明らかになるだろう。