喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求 第2東京弁護士会が黒薮の訴えを棄却 日弁連への異議申立てを決定
第二東京弁護士会は、9月2日付けで、2010年1月にわたしが喜田村洋一弁護士に対して申し立てた弁護士懲戒請求を棄却する決定を下した。主文は次の通りである。
対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当と認める。
この懲戒請求事件を担当したのは、第二東京弁護士会・綱紀委員会第2部会の秋山清人弁護士らである。
わたしが懲戒対象にした喜田村弁護士は、ロス疑惑事件の三浦和義被告や薬害エイズ裁判の安部英被告を無罪にした人権派弁護士として有名だ。日本を代表する人権擁護団体である自由人権協会の代表理事も務める。また、読売新聞社の販売政策を一貫して支援して来ており、同社に「押し紙(新聞の偽装部数)」は1部も存在しないと主張している。
このようなある種の詭弁を裁判所が認定したことで、裁判に敗訴し、人生を狂わされてしまった販売店主やその家族も複数いる。
第二東京弁護士会の秋山弁護士らが下した決定の評価については、内容を再検証した上で、後日、わたしの見解を明らかにするが、以下、議決書を読んだ率直な感想を述べてみた。従って公式の見解ではない。
事件の概要につては、次の記事を参考にしてほしい。
◇ 読売の販売政策を支えてきた喜田村弁護士
第2東京弁護士会が下した議決書によると、同会が喜田村弁護士を懲戒請求から救済した根拠としたものは、わたしと読売の間で続いてきた裁判の判決である。両者の間には、2008年から次の裁判があった。???の裁判は、読売が原告で、わたしが被告である。(ただし?については、『週刊新潮』も被告)?はわたしが原告で、読売が被告だった。
?著作権裁判:地裁、高裁、最高裁でわたしの勝訴。
?名誉毀損裁判1:地裁と高裁でわたしが勝訴。最高裁では、裁判所が全員一致で読売を逆転勝訴させる。
?名誉毀損裁判2:地裁、高裁、最高裁で読売が勝訴。
?損害賠償裁判:地裁と高裁で読売が勝訴。現在、最高裁で継続中。
?の損害賠償裁判は、読売が提起した???の裁判が、わたしが続けてきた「押し紙」報道などに対する「一連一体の言論弾圧」という観点から、損害賠償を求めたものである。メディアであれば、言論で対抗するのが当たり前だが、読売は、裁判攻勢をかけて、総額約8000万円の損害賠償を求めてのである。
これらの裁判に、読売の代理人としてかかわってきたのが、喜田村洋一弁護士である。
◇?弁護士倫理という観点からの検証の視点は不在
秋山弁護士らが裁決の根拠にしているのは、???の裁判で下された判決である。特に重要なのは、?。?の高裁判決が、読売と喜田村弁護士が行ったことは、言論弾圧に該当しないと結論づけた。それを根拠として、喜田村弁護士を処分する正当な理由はないと判断したのである。
?の裁判は、読売が敗訴しているが、それにもかかわらず、秋山弁護士らは、判決の中で喜田村弁護士に好都合な部分を取り上げて、「喜田村救済」の根拠づけにしている。
繰り返しになるが、詳細な見解については後日、明らかにする。それを前提に、以下、率直な感想を述べてみよう。
■まず、議決書は、弁護士の団体としての視点から、喜田村弁護士の行為を検証した結果ではなく、???の裁判における判決を根拠にして、喜田村弁護士を救済した内容になっている。そこには喜田村氏の行為を、弁護士倫理という視点から検証しようという熱意が全く感じられない。自分の頭で考えずに、裁判所の判決に大きく依存しているのだ。
■この事件では、読売の江崎法務室長がわたしに送りつけた催告書の著作物性がひとつの争点になっている。しかし、弁護士倫理という観点からすれば、それ以前の問題として、催告書に書かれている内容が、弁護士倫理とは相いれない怪文書に該当しないか否かを検証しなければならないはずだ。そこに記された内容を度外視して、文章の形式だけを論ずるのは、木を見て森を見ないに等しい。
催告書の内容は、江崎法務室長が作成して、わたしが新聞販売黒書に掲載した次の文章が江崎氏の著作物であると述べている。江崎個人の著作物であるから、削除せよと。削除しないのであれば、刑事告訴を含む法的手段を考慮すると。
前略 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。 当社販売局として、通常の訪店です。
この文書が著作物であるがゆえに、新聞販売黒書から削除するように求め、それをわたしが拒否すると、実際に裁判を起こしてきたのである。 しかし、著作権法でいう著作物の定義は次の通りである。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
よほど偏屈な法解釈をする者は別として、普通、誰が判断しても、上記の回答書は著作物に該当しない。当然、削除の対象にならない。それにもかかわらず催告書を送付して、著作権法を理由に、削除を求めたのである。これが他人を著しく愚弄する行為であることはいうまでない。自分が法の専門家で、素人に著作権法の知識はないという、思い上がったエリート意識の裏返しである。
わたしが催告書を怪文書であると主張してきたゆえんである。
改めて言うまでもなく、この催告書の内容を喜田村弁護士が知っていたことはいうまでもない。?の裁判の判決で、知財高裁は、催告書の作成者を喜田村弁護士と認定したのである。
ちなみにわたしは最近、喜田村氏が作者とされる催告書の中で言及している文書(問題の起点となった江崎氏作成の文書)が著作物ではないことを知っていた事実を示す新証拠も入手している。これについては後日、公開する。
弁護士職務基本規定は、弁護士による次のような行為を禁止している。
【75条】弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
■今回の懲戒請求の審理は、約2年半にも及んだ。通常は、半年ぐらいで決定を下す。2年半にも及ぶ審理を行ったわけだから、第2東京弁護士会として、自分たちの頭で考え、弁護士の倫理を高める観点から、自分たちの視線で、わたしの申立を審理するものと思っていた。が、結果は、裁判所の判決を借りて、喜田村弁護士を救済したことになる。
第2東京弁護士会と裁判所が、協調関係にあることも大きな問題だ。
この程度の内容の議決書であれば、2年半の歳月を何に費やす必要があったのだろうか。しかも、秋山弁護士らが重要な根拠としている?の裁判の判決は、現在も最高裁で継続中である。結論はまだ出ていないのだ。最高裁で判決が逆転(現在の司法界の体質では、実際には、まず、ありえない)すれば、決議内容も見直さなければならなくなってしまう。
なぜ、今の時期に裁決を下したのだろうか。
このような重大事件の懲戒請求が認められないとなれば、ある文書類の名義を偽って、それを前提に裁判を起こして、著作物性(著作者人格権)を主張しても、罰せられないことになる。今後、日本の司法は破滅にむかいかねない。
当然、60日以内に日弁連に対して異議を申し立てることになる。
議決書は、なるべく多くの弁護士に読んでほしいと考えている。