1. 検察審査会法の41条の解釈変更、報道されないうちに変更されていた、だれもが簡単に刑事被告人になるリスクの到来

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2014年09月02日 (火曜日)

検察審査会法の41条の解釈変更、報道されないうちに変更されていた、だれもが簡単に刑事被告人になるリスクの到来

国家公務員たちが、わがもの顔に憲法や法律の解釈を変更する風潮が生まれている。改めていうまでもなく、「憲法」解釈の変更といえば、安倍内閣の面々を連想する。が、刑事事件の行方を左右する検察審査会法の解釈が大きく変更されていた恐ろしい事実は、ほとんど知られていないのではないか?

検察審査会を牛耳る最高裁事務総局が、変更を告知したかどうかも不明だ。今後、調査する必要がある。

検察審査会法の解釈変更について説明する前に、この「改悪」を発見した人物を紹介しておこう。発見に至るプロセスをたどると、偶然に偶然が重なっており、神仏に冷淡なわたしでさえも、「もしかすると、最高裁事務総局の闇を糾弾する神が、この人物に憑いているのかも知れない」と本気で考えてしまった。

7月18日の午後1時10分。わたしは前参院議員の森裕子氏が、『最高裁の闇』の著者で、旭化成を退職した後に執筆活動を始めた志岐武彦氏に対して500万円のお金と、言論活動の一部禁止を求めた名誉毀損裁判の判決を聞いた。法廷には志岐氏もいた。

判決は、MEDIA KOKUSYOで既報したように志岐氏の勝訴、森氏の敗訴だった。

その後、われわれ支援者は東京地裁のロビーに降りた。と、志岐氏が玄関の前で、足を止めてスタンドに置かれていた「検察審査会Q&A」と題するリーフレットに手を延ばして、

「2、3冊もらっていこうか」

と、言って手に取った。

この2、3冊のリーフレットは表紙は同じだが、たまたま「新版」の中に「旧版」が紛れ込んでいたのだ。

結論を先に言えば、「旧版」と「新版」を照合すれば、最高裁事務総局がやったある恐ろしい事実が見えてくる。それを解明する役割を、「最高裁の闇」を追及してきた志岐氏が、裁判勝訴の日に担ってしまったのである。

◇検察審査会法の41条の解釈変更
「森VS志岐」裁判の背景には、小沢一郎氏が東京第5検察審査会の起訴相当議決で法廷に立たされた事件がある。議決の日が小沢氏が立候補していた民主党代表選の投票日(2009年9月14日)と重なっていたために、小沢氏の支持者の間で、検察審査会を管轄する最高裁事務総局がなにか不正な策略を巡らせたのではないかという噂が広がった。

そこで調査に乗り出したのが、志岐氏と森議員だった。最終的に2人は、方針や見解の違いで決別するのだが、共同戦線を張っていた時期に、小沢検審が架空議決(審査委が架空)だった疑惑をつかむ。

その根拠のひとつが、起訴相当議決に至るプロセス違反である。

検察審査会が議決を行う場合、検察審査会は検察官に対して、意見を表明する機会を与えなければならない規則になっている。ところが小沢氏を裁いた東京第5検察審査会は、担当検察官にその機会を与えていなかった疑惑が浮上したのだ。志岐氏らは、それを裏付ける検察官の出張名簿など、数々の内部資料や証言を入手したのである。

検察審査会法の41条では、検察官による説明義務について、次のように説明している。
 

検察審査会は、起訴議決をするときは、あらかじめ、検察官に対し、検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与えなければならない。

この法律の解釈は、「検察審査会Q&A」の「旧版」には、次のように記されていた。

 「起訴議決をするときは、あらかじめ検察官の意見を聴かなければなりません」

「旧版」の解釈を基にすれば、小沢事件の担当検察官は、検察審査会に説明に行っていないわけだから、審査員は「意見を聴いて」いないことになり、議決そのものが無効だったことになる。たとえ第5検察審査会が架空ではなかったとしても、意見を聴かずに議決を下したわけだから、不正な議決で小沢氏を法廷に立たせたことになってしまう。

そこで追いつめられた最高裁事務総局は、解釈を変更する必要に迫られたのではないか?かくて、「検察審査会Q&A」の「新版」は、次のように記述を変更している。

「起訴議決の前には、検察官に意見を述べる機会を与えなければなりません」

この解釈であれば、検察審査会が機会を与えたが、検察官がそれを断ったとしても、議決は成立する。すなわち検察官が説明を行わなくても、議決してもかまわないことになる。

法の解釈を180度変更したのである。安倍内閣をお手本にしたような結末である。

◇誰もが簡単に刑事裁判にかけられる

今後調査しなければならないのは、このような解釈の変更が、どのようなプロセスで行われたのかという点である。また、変更を官報などで告知したのか、という点も解明しなければならない。

さらに「新版」の解釈が採用されたわけだから、今後、最高裁事務総局が架空の検察審査会を設置して、検察官の「介在」なしに、架空議決を行っても、だれも気づかないことになる。最高裁事務総局のさじ加減で、だれでも刑事裁判にかけられ、最高裁の下部組織である裁判所がみずから判決を下すことになりかねない。

これでは軍事国家と代わりがない。

いずれにしても志岐氏の手に「検察審査会Q&A」の「旧版」と「新版」が同時に、しかも、森裁判の勝訴の日に手に入ったのは不思議だ。

(「検察審査会Q&A」の旧版)

(「検察審査会Q&A」の新版)