最高裁における情報開示の怪、法律を無視して役人の裁量で判断する「開示」と「非開示」
いまや民主国家では常識になっているのが情報公開制度である。これは、役所が保持する文書(たとえば、自治体の経理関係資料、議会の議事録など)の開示を住民が求めた場合、プライバシーや個人情報など若干の項目に抵触しない限りは、原則的に全面開示に応じる制度である。
情報公開請求は、国民の権利として法律で認められているのである。
ところが情報公開のルールが、裁量により堂々と踏みにじられているという声が上がっている。しかも、開示を請求してから、実際に役所が資料を開示するまでにかなりの時間を要す場合がままある。わたしも最高裁に対して、繰り返して情報公開を請求してきたが、開示まで半年ぐらいを要す。
民間企業であれば、1日で片づける作業を、のらりくらりと半年、あるいはそれ以上の時間を費やしてやっているようだ。しかも、肝心な情報を隠してしまう例が後を絶たない。
◇検察審査会のOB会
情報開示の求めを裁量で処理した結果、思わぬ「ミス」から役所の信用を完全に失墜させた具体例を紹介しよう。この件に関する資料を提供して下さったのは、市民オンブズマンいばらぎの元副会長・石川克子氏である。
■石川氏が情報公開請求した資料:全国検察審査協会連合会の役員名簿
■請求先:最高裁
全国検察審査協会連合会(全検連)というのは、検察審査会で審査員(有権者からくじ引きで選ばれる)を務めた人々のOB会である。肝心の審査プロセスでは、審査員の名前も審査の開催日も告知しない秘密に徹した運営をしていながら、不思議なことにOB会を作り、定期的に大会を開いている。ツアーなど娯楽にも余念がない。これでは守秘義務どろこではないだろう。
※検察審査会の管轄は、最高裁事務総局である
今年の大会は、5月26日に熊本市の「熊本ANAクラウンプラザホテル・熊本ニュースカイ」で開かれ、来賓として、日弁連の村越進会長も駆けつけている。
東京第5検察審査会の小沢検審で「架空議決」の疑惑が浮上していることは、MDKでも繰り返し報じてきた。石川氏が、全検連の役員名簿を開示するように求めたのは、検察審査会の実態を調査することが目的ではないかと思う。
◇非開示にした名前が広報紙に登場していた
石川氏の請求どおり、役員名簿は開示された。しかし、みごとな「黒塗り」のオンパレードだった。だれが全検連の役員を務めているのかは、完全に隠蔽されたのである。
役員名は個人情報には違いないが、公人でもある。さらに滑稽なことに、最高裁の広報紙に全検連の高野武会長が実名で登場していたのだ。次のページである。
このような実態を踏まえて、石川氏は2つの問題点を指摘する。
1.裁判所の広報紙には全検連会長の氏名と顔写真を掲載しておきながら 情報公開開示文書の役員名簿は真っ黒にして出すのは整合性がない。
2.高野武氏は、2014年5月時点で全検連の会長であるということ。 裁判所の協力団体の代表氏名をなぜ黒塗りにするのか理解できない。