1. 判決結果は歓迎も、前近代的な韓国社会を露呈、産経新聞の前ソウル支局長の裁判

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2015年12月18日 (金曜日)

判決結果は歓迎も、前近代的な韓国社会を露呈、産経新聞の前ソウル支局長の裁判

虚偽の記事により韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとして起訴された産経新聞の前ソウル支局長(49)の加藤達也氏に対して、ソウル中央裁判所は、17日、無罪の判決を言い渡した。

判決そのものは真っ当で、当然の結果であるが、裁判の中で、韓国の司法制度の未熟さを国際的に露呈する取り返しのつかない珍事が発生した。改めていうまでもなく、韓国外務省が「産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(49)の裁判に関し、検察を通じて裁判所に対し、日韓関係などを考慮し善処するよう要請した」ことである。

外務省という圧倒的な権力を握っている組織が、裁判所に対して判決の方向性を暗に示唆したわけだから、事実上、外務省の指示を受けて裁判所は、加藤氏を無罪にしたと解釈されても仕方がない。これは韓国の裁判制度そのものが正常に運営されていないことを意味する。韓国においては、三権分立は仮面であって、政治的判断により判決内容が決められていることになる。はからずも、この裁判を通じて前近代的な韓国の実態が露呈された。

当然、検察が控訴することもあり得ない。

考えてみれば、これは恐ろしいことだ。国の評価や威信にもかかわるが、実は他人事ではない。日本でもよく似た実態がある。しかも、わたしが知る日本のケースでは、韓国外務省に相当するのが、なんと新聞社である。

 ◇圧倒的に高い中央紙の裁判勝率

次のPDF資料は、「平成20年」から「平成25年」までの期間で、最高裁判所に上告(あるいは上告受理申し立て)された裁判のうち新聞社が上告人、あるいは被上告人になった裁判の勝敗表である。

結論を先に言えば新聞社(朝日・読売・日経)の48勝1敗である。これを見ると、新聞社を相手に裁判をしても、勝ち目がないことが分かる。表示した資料の中で、唯一の例外、つまり新聞社の敗訴は、である。読売が上告(受理申し立て)を行ったが、「不受理」になり敗訴が決定している。

は、上告人も被上告人も黒塗りで隠してあるが、実は上告人が読売で、被上告人がわたし「黒薮哲哉」である。黒塗りという情報公開の仕方そのものが読売に手厚く配慮したもので尋常ではない。

■最高裁における勝敗表PDF

この裁判は、MEDIA KOKUSYO(当時は、新聞販売黒書)の記事に対して、読売と3人の社員が、2008年、喜田村洋一・自由人権協会代表理事を代理人に立て、2230万円のお金を支払うように求めて起こしたものである。

地裁と高裁では、わたしが勝訴した。これに対して、読売は上告受理申し立てを行った。そして最高裁は、PDF資料にあるように、高裁判決を差し戻す判決を下したのである。これを受けて東京高裁の加藤新太郎裁判長は、わたしに対して110万円の金を払うように命じたのである。

ちなみに加藤裁判官は少なくとも2度、読売新聞に登場している。

◇アジアは依然後進国

わたしは新聞社、特に中央紙は朝日新聞をも含めて、日本の権力構造の一部に組み込まれていると考えいる。それゆえに新聞社を相手に裁判をしても、勝ち目がない。新聞販売店訴訟で、裁判所がいかに道理のない判決を下してきたかは、拙著『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)に詳しい。現場の取材もせずに、「押し紙」は1部も存在しないと認定しているのが、その分かりやすい実例である。

韓国の醜態(しゅうたい)は、他人事ではない。