1. 訴訟のビジネス化と多発する口封じ裁判、弁護士に対する成功報酬6000万円を約したユニクロの例も

司法制度に関連する記事

2014年08月08日 (金曜日)

訴訟のビジネス化と多発する口封じ裁判、弁護士に対する成功報酬6000万円を約したユニクロの例も

スラップ(SLAPP)とは、俗に裁判を提起することで、攻撃対象者に経済的にも精神的にもプレッシャーをかけて、言論を封じこめる戦略を意味する。

しかし、厳密には語源である英語のSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)の翻訳が定義ということになる。下記の通りである。

大衆運動に対抗するための戦略的な訴訟

言葉の定義が時代により、あるいは地域により変化することは言うまでもない。日本では、俗にスラップを指して、「恫喝裁判」とか、「口封じ裁判」という。ジャーナリスト、ブロガー、作曲家などの表現者が標的になることが多い。

わたしがこれまで取材したり、当事者になった裁判の中には、一部にSLAPPに該当する可能性があるものも含まれている。原告と代理人弁護士、被告、要求したお金の額などを紹介しておこう。スラップかどうかは、読者の判断にゆだねる。(※)はわたしが当事者となった裁判である。

■著作権※
原告 :江崎徹志(読売)
被告 :黒薮哲哉
 原告代理人:喜田村洋一
要求額:0円
判決:地裁、高裁、最高裁で黒薮の勝訴。判決確定。
参考知財高裁判決

 

■名誉毀損※
原告 :読売、他3名
被告 :黒薮哲哉

原告代理人:喜田村洋一、升本喜郎ほか
 要求額:2200万円(200万円は弁護士費用の請求)
判決:地裁、高裁で黒薮の勝訴、最高裁で読売が逆転勝訴。判決確定。

■名誉毀損※
原告 :読売
被告 :新潮社、黒薮哲哉
 原告代理人:喜田村洋一、藤原家康
要求額:5500万円
  判決:地裁、高裁、最高裁で読売が勝訴。判決確定。

■名誉毀損
原告 :ユニクロ
被告 :文藝春秋社
原告代理人:的場徹、ほか
要求額:2億2000万円
判決:地裁で文春が勝訴。東京高裁で係争中。
参考:原告は、弁護士に対して成功報酬6000万円を約している。
参考記事MyNewsJapan

■著作権
原告 :ソニー・ミュージックレコーズなどレコード会社31社
被告 :ミュージックゲート社
原告代理人:升本喜郎
要求額:2億3000万円
判決:現在、東京地裁で係争中
参考:被告は、作曲家の穂口雄右氏。東京地裁で係争中。
参考記事MyNewsJapan

■名誉毀損
原告 :亀田興毅、亀田大毅
被告 :片岡亮(ジャーナリスト)
 原告代理人:北村晴男
要求額:2000万円
  判決:現在、東京地裁で係争中。
参考記事MyNewsJapan 

 

■名誉毀損
原告 :森ゆうこ(前参院議員)
被告 :志岐武彦(市民ジャーナリスト)
原告代理人:小倉秀夫
要求額:500万円
 判決:東京地裁で志岐氏が勝訴。判決確定。
参考記事MyNewsJapan

 

■名誉毀損
原告 :A(女性)
被告 :Bほか1名(ブロガー)
 原告代理人:弘中惇一郎
要求額:3200万円
判決:東京地裁で係争中。
  参考記事MEDIA KOKUKSYO

◇司法制度改革審議会の意見書
スラップの背景には、広義の新自由主義=構造改革の中で提唱された司法制度改革がある。2001年6月、小泉政権下で発表された司法制度改革審議会の意見書にも、賠償額の高額化の必要性を述べた記述がある。スラップは言論封じを目的として、自民党が意図的につくり出したものにほかならない。

損害賠償の額の認定については、全体的に見れば低額に過ぎるとの批判があることから、必要な制度上の検討を行うとともに、過去のいわゆる相場にとらわれることなく、引き続き事案に即した認定の在り方が望まれる(なお、この点に関連し、新民事訴訟法において、損害額を立証することが極めて困難であるときには、裁判所の裁量により相当な損害額を認定することができるとして、当事者の立証負担の軽減を図ったところである。)。  

ところで、米国など一部の国においては、特に悪性の強い行為をした加害者に対しては、将来における同様の行為を抑止する趣旨で、被害者の損害の補てんを超える賠償金の支払を命ずることができるとする懲罰的損害賠償制度を認めている。しかしながら、懲罰的損害賠償制度については、民事責任と刑事責任を峻別する我が国の法体系と適合しない等の指摘もあることから、将来の課題として引き続き検討すべきである。