1. 「原発フィクサー」訴訟、原告が裁判を取り下げて終結 進む司法の腐敗と劣化?

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2013年08月19日 (月曜日)

「原発フィクサー」訴訟、原告が裁判を取り下げて終結 進む司法の腐敗と劣化?

ジャーナリストの田中稔(『社会新報副編集長』)氏が、白川司郎氏から6700万円の損害賠償を請求されていた「原発フィクサー」裁判は、原告の白川氏が8月12日、東京地裁に対し裁判の取り下げを申し立てたのを受け、田中氏がそれに合意したことで結審した。19日には、白川氏の本人尋問が開かれる予定になっていたが、裁判が終わったことでそれも中止になった。

発端は、『週刊金曜日』誌上に田中氏が執筆した「『最後の大物フィクサー』白川司郎氏 東電原発利権に食い込む」と題する記事。

記事の中で田中氏が使った「フィクサー」、「利権に食い込んだ」などの表現が、白川氏の名誉を毀損したというのが、原告の主張だった。  ちなみに白川氏がターゲットにしたのは田中氏だけで、記事を掲載した『週刊金曜日』は訴外とした。編集部サイドに対する訴訟行為は控えて、記事の制作にかかわった一個人だけに的を絞って高額な賠償金を請求したのである。 ? また、白川氏の代理人を務めたのは、第二東京弁護士会に所属する土屋東一弁護士(元検事)である。

◇小泉構造改革の中の司法制度改悪  

今世紀に入ってから大きな問題になっている社会現象のひとつに、スラップ(SLAPP)がある。スラップとは、端的に言えば、メディアや住民運動体に対して、訴訟を提起することで、言論や運動を委縮させる行為を言う。厳密に定義すると次のようになりる。

公に意見を表明したり、請願・陳情や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、 苦痛を与えることを目的として起こされる 報復的な民事訴訟のこと。(スラップ情報センター)

SLAPPという言葉から推察できるように、この「戦略」は米国で生まれたものである。皮肉なことにその米国にはSLAPPを取り締まる法律があるが、日本の裁判官は、SLAPPという概念すら持ち合わせていない。その結果、今世紀に入るころから、メディアや住民運動に対するSLAPPが続発している。

以下、SLAPPの具体例を明記するが、法廷でSLAPPが認定された例は存在しないわけだから、第三者から見てSLAPPと判断できる訴訟である。(ただし、訴権の濫用が認定された例はある。)

1、武富士VS三宅勝久他

2、安部晋三の秘書VS山田厚史

3、R総連VS西岡研介

?4、オリコンVS烏賀陽弘道

5、読売VS黒薮哲哉

6、講談社の社員 VS MyNewsJapan

7、ユニクロVS文藝春秋

8、レコード会社31社VS穂口雄右

9、白川司郎VS田中稔

ここにあげたのは、メディア界でよく知られている裁判で、住民運動に対するSLAPPを含めると、かなりの件数にのぼる。意外に知られていないが、1990年代には、携帯電話会社が基地局を設置する際に、住民を工事妨害などで訴えた事例もある。

「1」から「9」の事例についていえば、極めて興味深い事実がある。「1」「5」「9」の裁判で、第2東京弁護士会や自由人権協会の弁護士が、原告の代理人として裁判かかわっている事実である。

具体的には、弘中惇一郎、喜田村洋一、土屋東一の各氏である。さらに、穂口雄右氏の代理人を務めているTMI総合法律事務所には、最高裁の元判事3名が退官後、再就職(広義の天下り)している。

こうした現象の背景に、小泉構造改革=新自由主義導入の枠組み中で、内閣が主導するかたちで着手された司法制度の改悪がある可能性が強い。(続)

◆参考記事:最高裁判事の半数が天下り 法律事務所に30人中10人が再就職、癒着の温床に