公取委の前委員長・竹島一彦氏が、大手弁護士事務所へ天下り
公正取引委員会の前委員長・竹島一彦氏が退官後、日本の4大法律事務所のひとつである森・濱田松本法律事務所に、顧問として再就職(広義の天下り)していることが分かった。
竹島氏は2006年に公取委が新聞特殊指定の撤廃を打ち出した際に、新聞紙面で激しくバッシングされた。特殊指定撤廃は免れないというのが、大方の予想だったが、自民党の山本一太議員、高市早苗議員らが、特殊指定を扱う権限を公取委から取り上げるための議員立法を提出した結果、撤廃を断念した経緯がある。
実は公取委の関係者が、大手法律事務所へ再就職したケースはほかにもある。たとえば七つ森裁判、清武裁判、黒薮裁判と、次々と裁判を起こしてきた読売(渡邊恒夫会長)の代理人・TMI総合法律事務所へ、公取委の元事務総長・松山隆英氏が、やはり顧問として再就職している。
また、同事務所の顧問弁護士である三谷紘氏も、元公取委の委員である。
森・濱田松本法律事務所やTMI総合法律事務所は、主に企業法務の専門家の集まりである。特にグローバリゼーションの中で、バイリンガルの弁護士をそろえるなど、国際企業法務に力を入れている。
当然、独禁法を考慮に入れて活動しなければならない企業がクライアントになっている可能性が極めて強い。
こうした性質を持つ弁護士事務所が、公的機関の退官者と特別な関係を構築することは、民主主義を後退させる行為にほかならない。癒着の温床になる。ちなみにTMI総合法律事務所には、最高裁の元判事が3名も再就職している。
◆小泉構造改革と司法 ?
司法制度改革が本格的にスタートしたのは、2001年12月、当時の小泉首相を長とする司法制度改革推進本部が設置された時である。つまり小泉構造改革の一端としての性質があるのだ。日弁連も、「改革」を支持してきた。
日本の構造改革は、元々、ビジネス環境の国際化を目指すことを主眼としている。たとえば自国の法律が進出先の国の法律と大きく異なっていれば、多国籍企業が海外進出をためらうからだ。米国企業の日本進出を促すためには、法律を米国の基準に近づけなければならない。
実際、司法制度改革では、それに重きがおかれた。その結果、名誉毀損裁判における賠償金の高額化が進んだのである。また、金さえ貰えれば、だれの弁護でも引き受ける、どんなデタラメな主張でも平気で展開する弁護士が増えたのである。いわゆる「訴訟ビジネス」である。
法科大学院を設置して、弁護士人口を増やしたのも、ひとつには企業法務のエキスパートを養成する必要があるからだ。構造改革といえば、無駄を省いて財政支出を抑制することに主眼がおかれているかのような印象があるが、企業の繁栄を支えるために必要な支出は、容赦なく行われているのである。
公取委関係者の法律事務所への天下りが公然と行われている背景に、企業の利益をあくまで優先していく政界の空気があることは言うまでもない。構造改革がもたらした大企業優先社会の到来の中で、公取委関係者の天下りも当たり前になったのではないか。
司法改革を口にするのなら、法律事務所への天下りを全面禁止しなければならない。