裁判員制度の新聞広告に年間6億円の広告費、偽装部数を放置してきた最高裁の責任は重大
新聞の紙面広告の媒体価値を決める要素はなにか? この問いに対する答えは、一般論としては、新聞の公称部数の大小と新聞社のステータスである。
まず、前者については、新聞の発行部数が多ければ多いほど、紙面広告が読者の目にふれる機会が増えるわけだけから、当然の原理といえよう。
後者については、信頼できるメディアに広告が掲載されることで、広告そのものの信頼性が高まるので、これもあたりまえだ。
が、実際には、広告価格は交渉で決められることが多い。それが広告業界の慣行になっている。従って中央紙に全面広告をだす場合、500万円で引き受けてもらえる広告主もいれば、2000万円を請求される広告主もいるようだ。
ちなみにインターネットの時代になり、新聞の紙面広告は、「言い値できまる」とも言われている。
しかし、唯一、広告価格決定の原理によって広告代理店が価格を決めている対象がある。それが国や地方自治体の「役所」である。「役所」は厳密にABC部数に準じて、広告の価格を決める。しかも、価格が常識では考えられないほど高い。
次に示すのは、2006年に最高裁判所が裁判員制度のPRのために出稿した新聞の紙面広告(全面1面)の価格である。これを見るとABC部数に準じて価格設定が行われていることが分かる。(掲載回数は各紙とも2回)
読売新聞:1億1903万円
朝日新聞: 8689万円
?毎日新聞: 6085万円
?産経新聞: 2997万円
業務を請け負った広告代理店は、廣告社である。同社からの最高裁に対する請求総額は、5億9997万円である。約6億円にも上っているのだ。
このようなぼったくりの構図の下では、新聞社は偽装部数を増やす政策を続けざるを得ない。偽装部数の問題を指摘すると、裁判を連発するなど束になって攻撃してくるゆえんだ。
しかも、困ったことに最高裁は、「押し紙」の存在は一切認めていない。新聞社の主張を鵜呑みにして、「押し紙」の存在を全面否定する判決を出し続けてきた。早朝に販売店を「取材」すれば、即刻、実態が見えるはずだが、現場には足を運ばない。
改めて言うまでもなく6億円の財源は税金である。最高裁は、「押し紙」を放置することで、みずからのPR広告の価格を釣り上げ、税金を浪費している。 新聞社にとって、こんな便利な広告主は他にいない。司法記者がでたらめな判決を出し続けている裁判所を批判できないゆえんである。
新聞経営者は、まず、非常識に高い広告費を国に返すべきだろう。