1. 読売VS七つ森書館の仮処分・保全抗告審 司法の舞台に不公平感 元知財高裁所長が読売側のTMI総合法律事務所へ再就職

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2012年10月19日 (金曜日)

読売VS七つ森書館の仮処分・保全抗告審 司法の舞台に不公平感 元知財高裁所長が読売側のTMI総合法律事務所へ再就職

読売新聞東京本社が『会長はなぜ自殺したか』(七つ森書館)の著作権を主張して、販売禁止を求めた仮処分の保全抗告審で、知財高裁は15日、七つ森書館の抗告を棄却した。これで東京地裁の決定と異議審に続いて高裁でも読売の主張が認められたことになる。

裁判に圧倒的に強い読売の姿が浮き彫りになった。しかし、裁判の舞台を検証してみると、ある重大な問題が存在している。それは今回の保全抗告審の舞台になった知財高裁の元所長が、読売の代理人を務めている弁護士らが多数所属するTMI総合法律事務所へ顧問として再就職している事実である。

裁判は表向きは中立公正に行われるとはいえ、少なくとも法廷に立たされた当事者にとっては、不公平感を払拭できないのではないか?

TMI総合法律事務所に再就職している元所長とは、塚原朋一弁護士である。同氏は2007年5月に知的財産高等裁判所長に就任して、2010年8月に定年退官している。その後、東京弁護士会に弁護士登録を行い、TMI総合法律事務所に顧問弁護士として再就職し、現在に至っている。

裁判の公平中立な舞台という観点からすれば、元判事が弁護士事務所へ再就職する行為は問題を孕んでいる。合法的な行為であっても、それにより副次的な問題が生じる。かつての職場である裁判所と弁護士事務所の間に人脈が形成される結果、判決にも影響を及ぼしかねない。

ちなみにTMI総合法律事務所には、元最高裁判事も三名再就職している。次の方々である。敬称略。

※今井巧

※泉徳治

※才口千晴

さらに東京地裁の民事8部で進行している読売と清武英利氏の裁判では、民事8部の元判事・高山崇彦氏がTMI総合法律事務所の弁護士として登場し、読売をサポートしている。このようなケースでは、弁護士として訴訟に参加するのを辞退するのが良心ではないか。

◇七つ森書館の主張

七つ森書館は、社長名で次のようなメールを関係者に配信した。

10月15日に、知的財産高等裁判所第2部(塩月秀平裁判長)は、『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』に関する東京地裁の出版差止仮処分異議決定に対して当社が申し立てていた保全抗告を棄却するという決定を出しました。

この決定は、読売新聞側の主張を「鵜呑み」にした東京地裁民事40部(東海林保裁判長)の決定および異議決定をなぞっただけという、恐るべき不当なものです。裁判所は、読売新聞側の明白な詭弁を見抜けないのです。

七つ森書館と読売新聞の間でまったく正当に結ばれた出版契約書の効力を否定したばかりか、「職務著作権」の成立範囲を自社著作物以外に拡張し、メディア関わる人びとの表現の自由を著しく侵害するものです。このような「職務著作権」の拡張解釈は憲法違反です。

よって、最高裁判所へ特別抗告します。