1. 横浜の受動喫煙裁判、被告が弁護士を解任、みずから訴権の濫用を主張する方針

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2019年01月21日 (月曜日)

横浜の受動喫煙裁判、被告が弁護士を解任、みずから訴権の濫用を主張する方針

横浜地裁で進んでいる受動喫煙をめぐる裁判で、18日、被告が弁護士を解任した。解任理由は、裁判が弁護士の主導になってしまい、被告の主張が反映されないからである。被告は、原告と原告の山田義雄弁護士による訴権の濫用を強く主張しているが、被告の弁護士がそれを争点にしないために、被告がみずから裁判提起そのものの不当性を主張する方針を選んだのである。

既報したように原告は、A家の3人(夫妻とその娘)。被告は、A家と同じマンションの斜め下に住む藤井家の家主。

原告は、藤井家を発生源とする煙草の副流煙が原因で、A家の3人が化学物質過敏症になったとして、4500万円の金銭を請求している他に、自室での喫煙禁止を求めている。とはいえ、被告はヘビースモーカーではない上に、自室で窓(2重窓)を閉めて吸っていたに過ぎない。窓を開けたり、ベランダに出て吸っていたのではない。

しかも、仕事の関係で外出していることが多く、副流煙がA家に流れ込んでいた証拠もない。たとえA家に副流煙が流れ込んでいたとしても、その発生源が藤井家である根拠もない。被告と原告が住んでいるマンションの近くには、暗黙のうちに喫煙場所になっている所があり、そこにはおびただしい煙草の吸い殻が散乱している。

被告がこの事件を訴権の濫用だと考える背景には、次のような事実がある。

神奈川県警の刑事3人と警官1人が、2度にわたり藤井家を訪れ、藤井夫妻に職務質問をした事実。3人の刑事が、被告の自室の室内写真を撮った事実。

日本禁煙学会の作田学理事長が、原告3人の診断書を作成したのだが、そのうちA家の娘の診断書は、本人を直接診察せずに「レベル4」の認定を行った事実。..

原告の家主が、体調を悪化させるまで煙草を吸っていた事実。つまり受動喫煙以前の問題として、原告が煙草を吸っていた事実があるのだ。原告も昨年の10月になってそれを認めた。

これらの事実を考慮したとき、訴訟の大前提である受動喫煙による健康被害という主張そのものに根拠がないことを山田弁護士らが知りながら、強引に提訴に及んだ可能性が高い。虚偽の事実を訴因にして、それを裏付ける書面を裁判所に提出すれば、当然、訴権の濫用になる。

事実、弁護士業務基本規定の第75条も、こうした行為を禁止している。

【第75条】弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

4500万円という高額請求も尋常ではない。

 

◆裁判の政治利用

3人の刑事と1人の警官が動いた事実も今後、調査する必要がある。現段階では、神奈川県警の斉藤実本部長が、捜査を命じた事実が明らかになっている。

ちなみに原告のひとりが元禁煙者だったことが分かったのは、昨年の10月に、筆者が山田弁護士を取材した際に本人が話したからである。その際の録音もある。

その後、山田弁護士は、わたしに対して、記事を書かないように書面で申し入れてきた。もちろん応じなかった。今後も応じるつもりはない。


筆者はこの事件の背景には、政治的な要素があるのではないかと推測している。周知のように、東京オリンピックに向けて、喫煙を取り締まる動きが顕著になっている。たとえば、次のニュースである。

東京都の小池知事は、飲食店など建物の中を原則として禁煙にする罰則付きの条例を制定する方針を明らかにしました。東京から受動喫煙対策を前進させる考えです。

 条例案の基本方針では学校や医療機関は敷地内を禁煙とし、官公庁や福祉施設などは屋内を全面的に禁煙にするとしています。また、飲食店では規模の小さなバーなど以外は、喫煙室を除いて屋内禁煙としています。違反した喫煙者や施設の管理者には5万円以下の罰金を設ける方針です。(東京MXニュース)

喫煙の規制を進める運動を担っているひとりに弁護士で「都民ファーストの会」の岡本光樹都議がある。その岡本光樹都議による書面が、証拠として横浜地裁にも提出されている。裁判の政治利用が疑われるのである。

 

◆土俵は「司法」だけではない

被告の選択はきわめて正当だ。勇気ある選択だ。裁判の勝敗よりも、真実を明らかにする道を選択したのである。

作田医師に診断書の訂正を求める内容証明も既に提出されており、今後、この不当な裁判に加担した人々は、苦しい立場に追い込まれる。

もちろん筆者は、ジャーナリズムによる検証を続ける。土俵は「司法」だけではない。