1. 煙草以外にもある化学物質過敏症のメインな原因、 「煙草の副流煙で病気に、裁判で4500万円」②

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2018年11月29日 (木曜日)

煙草以外にもある化学物質過敏症のメインな原因、 「煙草の副流煙で病気に、裁判で4500万円」②

隣人の副流煙で化学物質過敏症を発症したので4500万円を支払え。

この裁判には不可解な部分が多い。昨日の記事で述べたように隣人の副流煙で1家3人が化学物質過敏症になったとして裁判を起こした原告が、実は、提訴の2年半前まで煙草を吸っていて重病になった事実が10月の下旬に判明したのだ。訴えられた藤井家は、怒り心頭に達しているのではないか。

被告の藤井氏には弁護士費用が発生している上に、裁判のために自分の仕事のスケジュールを調整しなければならない。それだけでも大きな負担になるうえに、敗訴した場合に発生する金銭負担を考えると気がきではないだろう。

 

◇化学物質過敏症を理解せずに提訴

原告は、副流煙が化学物質過敏症の原因になるという観点の論文や記事を大量に提出している。その中には、この分野の権威として知られる宮田幹生博士の書面もある。そこでは、確かに煙草の煙が化学物質過敏症の原因になることが語られている。

が、化学物質過敏症に関する論文や本をよく読んでみると、副流煙は数ある原因のひとつで、他に主要な要因があることが分かる。煙の場合は、畑で煙草を育てる段階で農薬を使うから、煙にも化学物質がまじり、それを体内に取り込んで人体影響を及ぼすという論拠なのだ。従って有機栽培のものはほぼ該当しない。

「副流煙で気管支炎や肺ガンになったから賠償せよ」というのであれば、理解できる。しかし、化学物質過敏症の原因を煙草だけに限定するのは、科学的ではない。原告が提出した資料だけでは十分とはいえない。

われわれの日常生活の中に潜んでいる他の誘発因子と比較すれば、煙草はむしろマイナー要因である。それを示すデータもある。

主要な原因は、たとえば芳香剤や柔軟剤などから空気中に飛び散るイソシアネートである。イソシアネートは接着剤や塗料の類にも使われている。アスファルトにも使われている。排気ガスも因子である。原告と被告が住むマンションから50メートルの地点に幹線道路が走っており、ここからも汚れた空気が団地へ流れ込んでいる。ダニや花粉も、化学物質過敏症の原因だ。

当然、原告が化学物質過敏症になったというのなら、煙草以外の観点からも、その原因を検証なければ、フェアーではない。ところが原告は、原因を副流煙だけに限定して、都合よくそれと整合する証拠だけを提出しているのだ。木を見て森も見ない論法なのだ。

化学物質過敏症とは何かをよく理解しないまま、裁判をすすめている。理解していなかったから、山田義雄弁護士も提訴を止めなかったのだろう。

そして提訴から約1年が経過して、原告は突然、提訴の2年半前まで煙草を吸っていたことを書面で認めたのだ。筆者は、この時点で原告が裁判を取り下げるのではないかと思った。少なくともある時期までは、副流煙の発生源は原告自身であったからだ。「闘値」が存在しないとする化学物質の毒性評価の原理からすれば、原告の副流煙は安全で、被告の副流煙は有害ということにはならない。

裁判の前提が崩壊しているのだ。

が、原告に訴訟を取り下げる意思はさらさらないようだ。

この裁判には、何か別の意図があるように感じる。提訴前に3人の刑事と1人の警察が動いており、藤井家の自宅内の写真も撮影している。こうした経緯からして、刑事告訴が行われ、それが受理されていた可能性もある。

しかし、訴えに十分な根拠がないことを、原告自身が知っていながら、告訴すれば、虚偽告訴罪になる可能性がある。

筆者は、こういう裁判は許してはいけないと考えている。

 

◇喫煙率の変遷

ちなみに次の図(出典;厚生労働省)は、喫煙率の変遷を示したものだ。喫煙率は年々減っている。これに対して化学物資過敏症は年々増えている。もし、煙草が化学物質過敏症の主要な原因であれば、両者の傾向は整合しない。煙草とは別に強い原因があるから、化学物資過敏症が増えていると考えるのが自然だ。(下記のグラフ:喫煙率(%)上群男性、下群女性)