1. 煙草の副流煙で病気に、裁判で4500万円を請求も実は原告本人が元喫煙者だった

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2018年11月28日 (水曜日)

煙草の副流煙で病気に、裁判で4500万円を請求も実は原告本人が元喫煙者だった

自宅の自室で煙草を吸う権利を剥奪する権限が司法にあるのか?それを問う裁判が、横浜地裁で進行している。

この裁判は先月、マイニュースジャパンで取りあげた。その後の経緯を報告する前に、事件の概要を紹介しておこう。

マンションの2階に住む一家3人が、化学物質過敏症になった。その原因が同じマンションの斜め下に住む被告家族・藤井家の煙草の煙にあるとして、4500万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

筆者は、裁判の全書面を読んだが、客観的に見て原告3人が化学物質過敏症である可能性が極めて高い。そのことには異論はない。しかし、その主要な原因が煙草の副流煙にあるとする原告の考えには疑問を感じた。もちろん煙草の煙も原因のひとつである。しかし、化学物質過敏症の原因は、イソシアネートをはじめ多種多様にわたる。マイニュースジャパンの記事では、原告が発症の原因を煙草だけに限定して、4500万円の損害賠償を求めたことに疑問を呈した。化学物質過敏症とは何かを理解していないのではないかと思ったのである。

また、刑事ら4人の警察関係者が藤井家を訪問して、2度にわたり事情聴取した事実も紹介した。これも通常はありえない。当然、解明が必要だ。

◇「以前喫煙しておりましたが」

以上が事件の経緯だ。裁判は簡潔に言えば、同じマンションに住む別の家族の煙草が原因で、化学物質過敏症になったので、約4500万円を支払えという構図なのだ。

ところが10月26日に、3人の原告のうち世帯主の男性が書いた陳述書が提出され、その中である重大な事実が判明したのだ。次の一文である。

私は、以前喫煙しておりましたが、平成27年春、■■と診断され、その時から完全にタバコを止めました。
その後は、タバコは、一切喫っておりません。

今回、横浜地方裁判所に訴状を提出したのは、平成29年11月21日ですので、私が禁煙してから既に、2年半以上の期間が過ぎております。

つまり原告は、原告自身がある時期まで煙草を吸っていながら、藤井家の副流煙が原因で化学物質過敏症になったと主張しているのだ。化学物質過敏症は、通常レベルの空気汚染であれば、断続的に被曝しても、ただちに症状を発症することはない。ある一定期間被曝した場合、発症するケースがあるのだ。

そうすると原告が化学物質過敏症になった原因は、原告の直接的な喫煙と、それによる副流煙である可能性が極めて高い。提訴の理由であった藤井家の副流煙による病気発症という論理が破綻してしまう。

◇弁護士職務基本規定の75条

なぜ、10月の下旬になって原告がみずからの喫煙歴を明かす書面を提出したのか、筆者には思い当たる節がある。マイニュースジャパンの記事を書くために、10月18日に原告の山田義雄弁護士を取材した際、山田弁護士は原告男性が煙草を吸っていたことを話したのだ。なぜ、その事実を話したのかは不明だ。

ところがその数日後、山田弁護士から、記事を書かないように通告した書面が届いた。それ自体が言論抑圧になるが、それはさておき、仮に原告が煙草を吸っていたことを知っていながら、それを伏せたまま、藤井家に禁煙と4500万円を請求する裁判を提起したとすれば問題がある。

そのことに気づき山田弁護士は、原告側から、実は原告本人が喫煙者だったことを公にしたのではないか。『弁護士職務基本規定』の75条に次のような条項がある。

弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

この裁判では、原告側から煙草の害を論証するたくさんの証拠が提出されている。ところが原告自身が元喫煙者だったのだ。

筆者は、この裁判が最高裁事務総局の「報告事件」に指定されない限り、請求は棄却されると見ている。

煙草の副流煙で病気に、裁判で4500万円を請求も実は原告本人が元喫煙者だった。

 

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