1. 「え?、どうして私が取り調べを?!」、捜査対象者がその法的根拠と捜査の進捗を知ることができない理不尽さ

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2018年11月13日 (火曜日)

「え?、どうして私が取り調べを?!」、捜査対象者がその法的根拠と捜査の進捗を知ることができない理不尽さ

まえぶれもなく警察から電話がかかってきて、任意出頭を求められる。ある日、突然、刑事が玄関の戸をノックして、黒い警察手帳を示し、家人に尋問をはじめる。その時になってはじめて自分が捜査対象になっていたことを知る。それまでは、自分が法的にどういう立場におかれていたのかを知ることはできない。あるいは取り調べ後も、法的な根拠が謎のまま放置される。

自分を誹謗中傷して牢獄へ閉じこめようとたくらんだ人物が誰なのかすら知ることができない場合もある。告訴人が、告訴の事実を記者会見などで明らかにした場合は少なくとも告訴人の像は明確になるが、この場合も被疑者は毎日、警察からの呼び出しに怯えながら暮らすことになる。従って刑事告訴は、告訴人の責任を伴う。完璧な根拠を公にする自信がなければ、やってはいけないことなのだ。

この1年の間に警察がらみの事件を2件取材した。1件は、元衆議院議員の三宅雪子氏が、5人の元支援者を告訴して、Twitterで「告知」した事件である。が、その後の経緯は、今年の7月の段階で「捜査中」という以外に、まったく分からない。5人は精神的な拷問に等しい苦痛を味わっている。聞くところによると、被疑者にされた人の中には体調をくづしたひともいるらしい。

過剰な個人情報の保護が5人を苦しめているのだ。

 

◇化学物質過敏症で刑事ら4人が出動

もう1件は、横浜市の化学物質過敏症をめぐる事件である。この事件では3人の刑事と1人の警官がSさん宅を訪れ、S家を発生源とする煙草の副流煙が原因で、隣人が化学物質過敏症を発症した可能性があるとして、主婦のSさんを事情聴取したのだ。

【参考記事「タバコの副流煙で化学物質過敏症になった」と4500万円請求の訴訟に――神奈川県警まで動いた団地の近隣トラブル

3人の刑事が動いたわけだから、当然、Sさんは自分が刑事告訴されていたことを疑った。が、個人情報の壁があって、Sさんは事実関係を知ることができない。それを探りあてる作業は途上にある。

かりにS家の副流煙が原因で隣人が化学物質過敏症を発症したという話に根拠がないことを知りながら、Sさんを刑事告訴していれば、虚偽告訴罪に該当する。ところがSさんは、自分が告訴されていたのかどうかの事実関係すらも知ることが出来ない。個人情報の壁があるからだ。

その後、Sさんはこの隣人から4500万円を請求する民事訴訟を起こされた。さらに裁判の中で、先日、この隣人がある時期まで煙草を吸っていたことも判明した。裁判書面の中でそれを認めたのだ。

ちなみに横浜市のケースでは、神奈川県警の斉藤本部長からの指示で刑事らが動いており、不自然な部分が多い。化学物質過敏症が何かをよく知らないまま、指示をだしたのではないか。この病気は、花粉症と同じように、だれでも発症する可能性があるのだ。

個人情報を守ることは大切だが、同時に被疑者にされたり、警察から理不尽な取り調べを受けた側の権利を守る方法も、今後、考案する必要があるだろう。来年の参院選のマニフェストに入れてほしいものだ。