1. 死刑制度のない国、激増傾向に、1970年は13カ国、2017年には106カ国

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2018年07月09日 (月曜日)

死刑制度のない国、激増傾向に、1970年は13カ国、2017年には106カ国

7月6日の午前、松本智津夫死刑囚ら7人のオウム関係者に対する死刑が執行された。これを機に、死刑の是非をめぐる議論が盛り上がっているようだ。1日の7件もの死刑を執行し、しかも、その日、西日本の大水害とも重なったにもかかわらず、安倍首相ら自民党の関係者が宴会を開いたことも、批判に拍車をかけた要因のようだ。

死刑についての是非は、国際的には、否定的な傾向が強まっている。アムネスティ・インターナショナルのデータによると、1970年の段階では、死刑制度を持たない国は、たったの13カ国だったが、2017年には106カ国に急増している。

アジアでは、韓国は既に死刑制度を廃止している。これに対して、中国は死刑制度を維持している。中米ニカラグアでは、1979年の革命までは死刑制度があったが、革命後、廃止され、内戦時の戦争犯罪を裁く裁判では、最高刑が懲役30年という前提で行われた。グアテマラも廃止しており、2013年には、元独裁者リオス・モントに対して禁固80年の判決が下っている。

世界的には、民主化と連動して、死刑制度も廃止の方向へ向かっているのだ。

死刑を廃止した国数は次のように変遷してきた。

1970年:13カ国
1980年:23カ国
1990年:46カ国
2000年:75カ国
2005年:86カ国
2010年:96カ国
2011年:96カ国
2012年:97カ国
2013年:98カ国
2014年:98カ国
2015年:102カ国
2016年:104カ国
2017年:106カ国
(出典:アムネスティ・インターナショナル)

◇冤罪の多発と死刑制度

日本には死刑制度がある。刑の執行は、2008年度(福田内閣・麻生内閣)の15件という例外はあるものの、10件を超えることはない。安倍政権下で劇的に増えた事実もない。これが客観的な死刑執行の実態である。

死刑について考える場合の視点は複数ある。たとえば、裁判で人が人を裁く権利があるのかという哲学的な問題である。人を裁く権限を国から与えられた裁判官は、ただならぬ特権を持つ職であるが、政治に配慮しながら、判決を下している人が多いのが実態だ。

また冤罪も多く、無実の人に対して刑を執行するリスクがある。たとえば飯塚事件では、無実の人に対して刑を執行したのではないかとの強い疑惑が浮上している。日本で最も問題視しなければならないのは、冤罪の問題だと思う。特に冤罪という観点を優先して、緊急に死刑制度を考えてみるべきだろう。

ちなみに8日夜に、松本智津夫死刑囚らが、NHKに事件の真実を語っていたとする趣旨のドキュメントをNHKが放送したらしい。「真実を語らないまま死刑が執行された」という世論の批判に対する政府側の反論を代弁したのかも知れない。

 

【写真】松本智津夫元死刑囚