1. 橋下徹・元大阪府知事がIWJ岩上安身氏を提訴、リツィート1件で100万円を請求、訴権の濫用か?

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2018年01月23日 (火曜日)

橋下徹・元大阪府知事がIWJ岩上安身氏を提訴、リツィート1件で100万円を請求、訴権の濫用か?

ツイッターのリツイート(RT)を理由とした名誉毀損裁判が大阪地方簡易裁判所で起きた。裁判を起こしたのは、元大阪府知事でタレント、弁護士でもある橋下徹氏である。訴えられたのは、IWJ代表でジャーナリストの岩上安身氏である。

岩上氏は22日に自由報道協会で記者会見を開き、訴訟の詳細を明らかにした。それによると橋本氏は、トラブルを解決するための話し合いの申し入れや内容証明による警告を発することもなく、昨年の12月15日にいきなり提訴に及んだという。請求額は、100万円。たった1度のリツィートで、しかも、当該のツィートに対して岩上氏がコメントすら書き込んでいないにもかかわらず、このような高額を請求してきたのである。

岩上氏は、SNSが普及している社会のなかで、「誰の身の上にでも起こり得る」訴権の濫用事件として、言論を抑圧する風潮や、仮に敗訴した場合の負の影響に懸念を示した。

問題となっているリツィートの内容は、現段階では未公表。記者会見の場での公表が、再び名誉毀損行為に問われるリスクがあるかだ。

◇簡易裁判所で「小遣い」稼ぎ

ちなみに松井一郎・大阪府知事も、米山隆一・新潟県知事に対して、ツイッターで名誉を毀損されたとして、裁判を起こしている。

松井知事が新潟県知事を「名誉毀損」で提訴

はからずも「日本維新の会」の関係者が、ひと月ほどの間に、ツイッターに関連した2件の名誉毀損裁判を起こしたことになる。尋常ではない。

これらの裁判が訴権の濫用に該当するかどうかは、今後、検討してみる必要があるが、結果として提訴が言論を抑圧する効果を発揮していることだけは否定できないだろう。とりわけ岩上氏のケースでは、他人のツィートを単にリツィートしただけで、100万円請求されているわけだから、社会通念からすれば非常識である。

表に出ていないだけで、水面下でこうした一種の「脅迫」が横行している可能性もある。大半の人にとって裁判とは、得体の知れない不安をかき立てるものなのだ。訴状が届いただけで震え上がる人もいるのだ。その恐怖から逃れるために理不尽な金銭要求に応じて、係争から「逃避」する人がいる可能性もある。こようなケースでは、提訴先が簡易裁判所になることが多い。裁判の進行が早く、手っ取り早く「お金」を受け取る目的と整合するからだ。

筆者の知っているケースだが、この方法で10万円、20万円程度の「小遣い」を稼いでいる知人がいる。

橋下氏の提訴先も簡易裁判所である。その理由を知りたいものだ。幸いに自由報道協会が橋下氏に記者会見を開くように要請しているので、機会があれば質問してみたい。

◇ジャーナリズムの土俵

訴権の濫用に対する対策はあるのだろうか。筆者が考える対策は、係争をジャーナリズムの土俵にあげることである。現在日本の法理からすれば、名誉毀損裁判の場合、原告側が圧倒的に有利だ。そこで係争をジャーナリズムの舞台に上げるのだ。

法廷を土俵とした闘いは2年から3年で終わるが、ジャーナリズムの土俵に原告を立たせれば検証は、10年、20年と続く。現在のところスラップ防止法が出来る見込みがない。と、すれば闘いの手段は、ジャーナリズムしか残っていない。

【写真】岩上安身氏