1. 最新の言論弾圧のかたち、取材を受けた者がターゲットに 5件の訴訟のうち3件が新聞社がらみの異常

言論活動の妨害に関連する記事

2012年10月08日 (月曜日)

最新の言論弾圧のかたち、取材を受けた者がターゲットに 5件の訴訟のうち3件が新聞社がらみの異常

「横行する『口封じ訴訟』をはね返す10・5集会」は、予定どおり5日の6時30分から、東京・文京区の出版労連本部で開催された。この集会で発言した5名は、いずれも裁判の当事者である。皮肉なことに5名がかかわっている5件の裁判のうち、3件が新聞社がらみである。

言論や人権をもっとも重視しなければならない言論機関が、言論や人権の問題を起こしているのである。

5名の発言のうち、わたしが取り上げたテーマについて、簡単に報告しておきたい。

わたしは第2次真村裁判の高裁判決を例に、言論弾圧のターゲットが記事やルポの執筆者だけではなく、取材を受けた者にも及んでいる実態を説明した。

取材を受けた者に対する言論弾圧が最初に浮上したのは、わたしが知る限りでは、オリコン訴訟である。

これはジャーナリストの烏賀陽弘道氏が、『サイゾー』編集部の取材を受け、同編集部がそれを記事の中でコメントのかたちで紹介したところ、烏賀陽氏が提訴された事件である。『サイゾー』編集部は訴外となり、烏賀陽氏だけが法廷に立たされた。

オリコン裁判は、編集部の取材に応じた者が法廷に立たされ、編集部は訴外になるという異常ぶりだった。が、少なくとも記事に登場した者が、被告になったという点で、多少はその是非を問う余地はあった。

しかし、第2次真村裁判の判決では、真村氏がわたしの取材を受け、資料を 提供したことが、販売店改廃の正当な理由にされてしまったのである。記事の中でコメントしたことを是非を問う以前に、取材に応じ、資料を提供したことが、「幇助」とされたのだ。判決文は次のように述べている。

そして、控訴人(注:真村氏)や控訴人代理人が、上記のような(注:読売を批判する)記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するものというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る。

ちなみに真村氏がわたしに提供した資料の99%は、裁判所へ提出されたもので、だれでも自由に閲覧できる。

この判決は、裁判官がジャーナリズム活動とは何かをまったく理解していない証にほかならない。取材で得たデータをアレンジして、記事として公にするのは、執筆者である。取材が受け真村氏ではない。

だから同じデータを入手しても、執筆者によって記事の内容は異なる。

それに執筆者であるわたしが取材したのは真村氏だけではない。複数の店主を取材して、ひとつの記事、あるいはルポにまとめたのである。ところが判決は、記事の責任は真村氏にある断定しているのだ。はなはだしい論理の飛躍である。

人の裁く特権を有している裁判官が、新聞社がかかわった訴訟で、ジャーナリズム活動の初歩の初歩も理解していないのだ。これはある意味では恐ろしいことだ。ブラック・ユーモアではすまない。