1. 出版業界が軽減税率の適用問題で政界に接近、浮上してきたメディアコントロールの危険な構図

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2018年07月12日 (木曜日)

出版業界が軽減税率の適用問題で政界に接近、浮上してきたメディアコントロールの危険な構図

ジャーナリズムの分野といえば、新聞、放送、雑誌、書籍、インターネットと多岐に渡るが、相対的に見て最も健全でレベルが高いのは書籍である。取材にかなりの時間を要する上に、情報量が多いので、制作する際に読者に読ませるための技術を駆使しなければならない。それだけに書籍の価値は、記事や映像とは比較にならない。極論すれば、映像などはイメージの世界なので、どうにでもごまかし(印象操作)ができる。

日本の出版ジャーナリズムは、優れた作品を数多く生み出してきた。

その出版ジャーナリズムがメディアコントロールにさらされる危機に直面している。書籍に対する消費税の軽減税率の適用を求めて、出版関係の業界団体が、政界と「交渉」に入っているのだ。政界もそれに理解を示している。両者の関係が親密さを増している。

去る6月11日には、国会議員で構成する活字文化議員連盟(細田博之会長)と子どもの未来を考える議員連盟(河村建夫会長)が、合同総会を開き、書籍に対して軽減税率を適用する方針を決めた。新聞と同様に、書籍についても消費税8%に据え置く方向を打ち出したのである。

新聞に対する軽減税率の適用はすでに決定している。この種の優遇措置としては、他にも再販制度などがある。これらの制度と引き換えに、新聞は「政府広報」に変質しているのである。新聞がジャーナリズムになりえない最大の要因である。

ところが軽減税率の適用問題を通じて、今度は出版業界も新聞業界と同じ道を進もうとしている。癒着の構図が生まれようとしているのだ。6月の合同総会には、日本出版書籍協会の相賀昌宏理事長をはじめ200名を超える出版関係者が参加したという。

◇言論抑圧の具体的な手口

安倍政権下で言論を抑圧する動きがますます活発になっている。その手口は単一ではない。次のようなものがある。

①政治家が出版社(新聞社を含む)の経営上の弱点を把握した上で、それを救済する政策を打ち出すことで、癒着関係を構築する。例としては、新聞に対する軽減税率の適応、再販制度の維持、「押し紙」の放置。

②法整備を進める。例としては、特定秘密保護法や共謀罪法の制定。

③名誉毀損裁判を多発させる空気を形成して、法的に表現の枠を規制する。例としては、ヘイトスピーチをめぐる一連の裁判。原告らは、この構図には気づいていないようだ。

ちなみに政治家と出版人の会食などは、枝葉末節にすぎない。また、出版物の内容を批判されても、新聞社・出版社は何の痛痒も感じない。「見解の相違」と言えばすむからだ。ところが既得権益や法整備など、客観的なもので攻撃されると、抗し切れない。

 

【写真】自民党の細田博之議員(活字文化議員連盟会長)