1. フランスでフェイクニュースを取り締まるための法改正が成立、言論統制に悪用される可能性も

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2018年07月05日 (木曜日)

フランスでフェイクニュースを取り締まるための法改正が成立、言論統制に悪用される可能性も

海外メディアによると、4日(現地時間)、フランスでフェイクニュースを取り締まるための法改正が成立した。大統領選挙を含む選挙時に、ラインなどでフェイクニュースを拡散する戦術が問題になり、マクロン大統領が自ら対策に乗りだした結果である。

しかし、何をもってフェイクニュースと定義するのか、今後、議論が白熱しそうだ。■出典

この問題は、今年の1月に、日本版の『ニュース・ウィーク』も取りあげている。冒頭部分を紹介しておこう。

フランスのマクロン大統領は1月3日、偽(フェイク)ニュース対策を進めるため、年内にメディア法を改正する方針を示した。ソーシャルメディアに拡散する偽ニュースは自由民主主義を脅かすとしている。

同氏は、昨年の大統領選で自身の陣営が偽ニュースや大規模なハッキングの被害を受けたと主張。昨年5月の就任後、ロシアの政府系メディアを名指しし、仏大統領選期間中に自身をめぐる偽ニュースを流し、選挙に影響を及ぼそうとしたと非難している。

同氏は新年の記者会見で「自由民主主義を守りたいなら、強力な法制が必要だ」と発言。メディアの規制機関である視聴覚最高評議会(CSA)の役割変更を検討していることも明らかにした。(中略)

偽ニュースが掲載された場合の緊急手続きとして、判事がコンテンツの削除、アカウントの閉鎖、サイトへのアクセス阻止を命じられる体制を整えるとしている。■出典

◇何がフェイクニュースなのか??

法律で言論を制限する動きは、日本だけではないようだ。おそらく同じ流れが日本にも入ってくるだろう。そのための前段なのか日本では、名誉毀損裁判で名誉毀損を認定する動きがますます活発になっている。昨日のメディア黒書でも述べたように、名誉毀損裁判の判決に政治判断が介入してくる温床がますます広がっているのだ。

フェイクニュースが社会秩序を乱すことはいうまでもないが、何をもってフェイスニュースとみなすのかという言論の自由にかかわる重大な問題は解決していない。フェィクニュースの定義があいまいなので、特定の情報にフェイクニュースのレッテルを張って言論統制が強化されるリスクもある。

たとえばM君リンチ事件の報道も、広義しばき隊の人々から見れば、フェイスニュースである。裁判所もそれを認定しかねない状態だ。「押し紙」報道にしても、読売新聞社や新聞協会から見れば、「押し紙」報道はフェイクニュースである。携帯電話に使われるマイクロ波による人体影響を指摘する報道も、日本の総務省からみればフェィクニュースなのである。

筆者は、フランスの国会はとんでもない過ちを犯したと考えている。こんな法律を作るよりも、メディアリテラシーの教育をしっかりすれば、どのようなメディアが信用するに値して、どのようなメディアが信用できないかを自分で判断できる人々が増えるのだが。多様な言論の中から、情報は自分で選ぶものだ。国家が定めた法律に選んでもらうものではない。

言論を法律で取り締まる愚かさを認識すべきだろう。

 

【写真】マクロン大統領