1. 経済同友会が提言、「国家戦略特区を問い直す~特区のキーワードは“実験場”と“失敗の容認”~」、規制緩和の足踏みに不満表明

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2015年04月27日 (月曜日)

経済同友会が提言、「国家戦略特区を問い直す~特区のキーワードは“実験場”と“失敗の容認”~」、規制緩和の足踏みに不満表明

 経済同友会は23日、「国家戦略特区を問い直す~特区のキーワードは“実験場”と“失敗の容認”~」と題する提言を発表した。

  これは安倍内閣が設置した国家戦略特区における新自由主義=構造改革の「実験」が足踏みしていることに対して、苦言を呈したものである。容赦なく規制緩和を押し進めるように提言している。

 ちなみに国家戦略特区は、次の地域である。

東京圏(東京都・神奈川県、千葉県成田市)

関西圏(京都府・大阪府・兵庫県)
沖縄県
新潟市
養父市
福岡市

  特区での集中取組期間は2015年度の末までだが、「特区の進捗は総じて遅いと言わざるを得ない」というのが経済同友会の見方である。具体的には、次のように苦言を呈している。

「現時点では、「目指す姿」の実現にはほど遠く、ようやく2合目辺
りまで来たというのが我々の実感である。東京オリンピック・パラリンピッ
クへの取り組みで都市としての景観は大きく変わるであろうが、世界に比し
て優位なビジネス環境を創りあげることに再度焦点を当てた取り組みの強化
が必要である。」

◆財界の不満とは規制緩和の足踏み

 新自由主義=構造改革とは、グローバリゼーションの下で、大企業の国際競争力を高めるために、企業の税負担を軽減し、労働法制を改悪するなど、規制緩和を押し進める政策で、橋本内閣の時代に本格的にスタートした。

具体的には省庁を再編し、医療や福祉を切り捨てるなど「小さな政府」を目指すことを基本方針としている。副次的には、多国籍企業の日本進出を想定して、国際業務ができる弁護士を増やしたり、大学を職業専門学校へ変質させるなどのハーモニーゼーションを前提としたさまざまな「改革」を含む。

 法科大学院や裁判員制度もそのひとつである。

 「ムダづか いをはぶく」という表現は聞こえはいいが、要するに税負担を嫌う大企業への配慮である。そのために「小さな政府」を目指す。その一方で消費税を段階的に引き上げてきた。「小さな政府」の対局として浮上するのが、新市場である。公共サービスという新市場を企業に提供することになる。

 国家戦略特区における政府の方針で経済同友会が不満を表明しているのは、
規制緩和の足踏みである。もたもたせずに、迅速に規制緩和を進めるように提言しているのである。たとえば、

「日本の特区に最先端技術を持ち込めば、先行的に実証実験が行えて、実用
化できるということになれば、世界中から独創的な技術を持つ企業と人材が
集まる。資金も集まり、対日直接投資の拠点となり得る。さらに世界に向け
て情報発信できる。特区の窓を世界に向けて開けることが必要である。

「特区は岩盤規制により今までできなかったことを試せるチャレンジの場のはずである。もし失敗や弊害が生じたとしても、その原因が分かれば将来の取り組みの糧となる。まずは失敗を恐れずチャレンジすることが重要である。」

◆新しくて実は古いアベノミックス

 改めて言うまでもなく、国家戦略特区での「実験」がスムーズに進まないのは、新自由主義=構造改革の矛盾が吹き出しているからである。非正規社員の割合が全体の約4割になり、大企業の社員を除いて、大半のサラリーマンの収入は実質的に下がっている。

  アベノミックスの恩恵を受けたのは、株式投資をしている一部の層だけである。

 テレビは盛んに、創意と工夫により起業すれば、だれでも豊かな未来を手にできるかのような幻想が振りまいているが、「敗者」になる確率の方が格段に高く、しかも、「敗者」に救済措置は準備されていない。

 アメリカン・ドリームの嘘と同じである。

 新自由主義=構造改革の矛盾は顕著になっていて、「改革」が進まないのは、ある意味では当然だ。このまま「改革」を続ければ、安倍内閣の死活問題になりかねない。だから足踏みしているのである。

 自民党は、小泉構造改革が生んだ弊害により、政権の座を追われた過去の失敗を自覚している。それゆえに安倍内閣は、発足当初は、財政支出の抑制をあきらめ、アベノミックスで公共事業の金をばらまいたのである。

 これは橋本内閣が新自由主義=構造改革の断行で、国民の反発を受け、その後に誕生した小渕内閣が、公共事業の金をばらまいたのと、まったく同じパターンである。斬新な政策でもなんでもない。

 やむなく財政支出を増やした後、安倍内閣は再び「新自由主義=構造改革」をスタートさせたが、思惑通りには進んでいないようだ。それが経済同友会の苦言として露呈した。

■国家戦略特区を問い直す~特区のキーワードは“実験場”と“失敗の容認”