1. 読売がマクドナルドの配達へ、懸念される従業員の負担、新聞配達との両立は困難?

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2021年04月30日 (金曜日)

読売がマクドナルドの配達へ、懸念される従業員の負担、新聞配達との両立は困難?

読売新聞社と日本マクドナルドが提携して、YC(読売新聞販売店)がハンバーガーの宅配に参入することが、メディア各社の報道で明らかになった。読売新聞(電子)は、次のように日本マクドナルドとの提携を報じている。

読売新聞グループ本社と日本マクドナルドは28日、読売新聞の販売店(YC)がマクドナルドの宅配サービス「マックデリバリー」を受託し、YCスタッフがマックの商品を配達する取り組みを全国で進めていくと発表した。YCが組織的にフードデリバリーを受託して全国展開するのは初めて。■出典

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新聞販売店の副業は、デリバリー業を中心に、さまざまな可能性を探りながら、数年前から実験的に導入されてきたが、成功したという評価はほとんど聞かない。参入をためらう販売店主の方が多い。少なくとも筆者が取材した限りでは、そんな印象を受けた。

新聞販売店が新聞以外の商品も配達できると考えるのは労働現場を知らない人の発想である。

新聞販売店で働く人々の1日は早朝に始まる。午前1時から3時ぐらいの時間帯に出勤する。それから折込チラシを新聞に折り込む。配達に出発して、販売店に戻るのは、6時過ぎである。

それから朝食を食べて睡眠を取る。1時ごろに再び販売店に出勤して、自動折込機で折込広告を束ねる作業をする。3時ごろには、夕刊が搬入される。夕刊の配達が終わるのが5時過ぎだ。

もちろん残紙の処理もある。

さらに業務は続く。新聞購読料を集金したり、新聞拡販で戸別訪問を繰り返す。新聞の集金は、読者から集金時間を指定されることもあり、夕食の後に「再出動」しなければならないことも少なくない。

夕刊配達がない地方都市の場合は、午後からの時間帯をハンバーガーの配達に充てることもできるかも知れないが、問題は、夕刊のない辺鄙な地で、赤字にならないだけのハンバーガーの需要があるかどうかだ。需要が見込まれる肝心の昼食前の時間に人材を確保するのも難しいのではないか。

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新聞販売店の労務は、昔から社会問題になってきた。働き手が不足して、新聞奨学生をリクルートしてきた歴史があるが、それも近年は上手くいっていない。そこでベトナムなど海外から人材を集めているのが実態だ。そのベトナム人もコロナの影響で来日にためらうようになっている。

読売新聞が、強引にデリバリービジネスを展開すれば、残紙問題だけではなく、労務問題も浮上する可能性がある。