1. 特定秘密保護法、「自称」フリーランスが報道人とみなされず処罰対象になる危険性、17日に違憲訴訟の第2回口頭弁論

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2014年09月08日 (月曜日)

特定秘密保護法、「自称」フリーランスが報道人とみなされず処罰対象になる危険性、17日に違憲訴訟の第2回口頭弁論

フリーランスのジャーナリストや編集者、それに写真家など43名が起こしている特定秘密保護法違憲訴訟の第2回口頭弁論が、9月17日11時から東京地裁第803号法廷で開かれる。わたしもこの訴訟の原告団に加わっている。

周知のように特定秘密保護法は、国会で十分な審議を重ねることなく、昨年の12月に成立した。

この法律は、行政機関の長が「特に秘匿することが必要である」と判断した事柄を、「特定秘密」として指定し、それを取り扱う者が適正に対処する資質を備えているかを評価したり、漏えいした場合の罰則などを定めたものである。「特定秘密」に指定された情報を入手しようと試みる行為も処罰の対象になる。報道関係者にとって特に脅威なのは、情報入手に関する法的規制である。

ちなみに具体的に何が特定秘密に指定されているかも、「秘密」である。知りようがない。それにもかかわらず特定秘密保護法に違反した場合は、法廷に立たされ、最高で、10年の「ブタ箱ぐらし」の判決を受ける。

フリーランスとしてジャーナリズム活動に従事している者にとっては、取材活動に対する「合法的」な言論妨害にほかならない。施行されると、フリーランスとしての活動そのものが出来なくなる。

◇「出版又は報道の業務に従事する者」とは?

確かに特定秘密保護法では、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為」に、免責が与えられることになっている。しかし、問題は、「出版又は報道の業務に従事する者」の定義である。

結論を先に言えば保護の対象になるのは、新聞社やテレビ局など、いわゆる企業に所属して、記者クラブを組織している人々である。それ以外の「取材者」、たとえばフリーランスのジャーナリストやブロガーは、対象にならない可能性が高い。

たとえば公募のノンフィクション作品に応募するために、大学生が福島原発に潜入して現場の内情を曝露する。ところが原発に関する情報が、テロ防止を理由に特定秘密に指定されていた。

この場合、大学生は「出版又は報道の業務に従事する者」ではないので、処罰の対象になる。

◇自称フリーライター

一方、出版業界の片隅にいるとはいえ、一応出版実績のあるライターはどのような扱いを受けるのだろうか。「出版又は報道の業務に従事する者」とみなされるのだろうか?

わたし自身の例を紹介しよう。わたしは共著を含めると20冊を超える単行本を出版しているが、それでも「自称フリーライター」ということになっている。「自称」とは、本当はフリーライターではないという意味である。

これまでにわたしは公の場で、2度にわたって「自称フリーライター」のレッテルを張られた。

まず、最初は2009年7月だった。週刊新潮に掲載した「押し紙」問題に関する記事に対して、読売が名誉毀損裁判を起こしてきたのであるが、読売の代理人だった喜田村洋一・自由人権協会代表理事と藤原家康自由人権協会事務局長が執筆した訴状の中に次のような記述があった。被告について述べた部分である。

(2)被告株式会社新潮社(以下「被告新潮社」という)は書籍および雑誌の出版等を目的とする会社であり、『週刊新潮』を発行している。
被告黒薮哲哉(以下「被告黒薮」という)は、ジャーナリストと称している

■出典:訴状(2ページ)

「ジャーナリストと称している。」という表現には、「称しているが、そうではない」というニュアンスがある。正当な日本語では、「ジャーナリストである」と表現する。

ふたつ目のケースは、上記裁判の提訴を報じた毎日新聞の記事である。冒頭の部分を引用しておこう。

新聞の販売部数を巡る「週刊新潮」の記事は真実と異なり名誉棄損(黒薮注:「棄損」は誤字。正しくは「毀損」)に当たるとして、読売新聞社は8日、発行元の新潮社と執筆した自称フリーライター黒薮哲哉氏に約5500万円の損害賠償と謝罪広告を求め、東京地裁に提訴した。

■出典

ちなみに毎日の件に関しては、毎日新聞社の第3者機関である「開かれた新聞委員会」に抗議したが謝罪すらなかった。委員の一人だった上智大学の田島泰彦教授から個人的に謝罪があっただけだ。

新聞関係者や「人権派」の集まりであるはずの自由人権協会の関係者ですら、フリーランスを「出版又は報道の業務に従事する者」とはみなしていないのである。あるいはそのような解釈が日常の中で構築されているのである。

改めていうまでもなく、フリーランスは記者クラブから締め出されている。

フリーランスにとって、「出版又は報道の業務に従事する者」として認めてもらうためには、今回のような違憲訴訟まで提起せざるを得ないのである。

◇右翼に加担するフリーランス

余談になるが、朝日新聞の慰安婦報道に連座して、識者の中にも右翼に加担する人が増えているが、特定秘密保護法の施行が近づきなんとか自分だけは、「出版又は報道の業務に従事する者」の側に入ろうという思惑があるのかも知れない。

また、特定秘密保護法が施行されても、新聞社やテレビ局に所属していれば、安全というわけでもない。これについては日を改めて述べる。

※17日の裁判が閉廷した後、弁護士会館の5階会議室で、報告会が予定されている。だれでも参加できる。