【書評】『体をこわす13の医薬品・生活用品・化粧品』、うがい液でかえって風邪をひきやすくなる
「騙される」、あるいは「騙す」というキーワードを視点として、ドラッグストアーの商品棚を眺めてみると、有害無益な商品が何点かある。『体をこわす13の医薬品・生活用品・化粧品』(渡辺雄二著、幻冬舎)は、そんな医薬品、生活用品、化粧品を取りあげている。禿げの原因になるシャンプー、皮膚障害の原因になる入浴剤、それに風邪の完治を遅らせる風邪薬などである。
その中でも、とりわけ身近で興味深い例は、うがい薬である。インフルエンザを防止するために、「手あらい」と「うがい」が大々的に宣伝されていて、それに便乗してドラッグストアーは、風邪が流行するシーズンになると、売り場の一角に、ヨードを主成分とするうがい薬を積み上げたりして客の獲得を狙う。
本書では、うがい薬の「ウソ」を示唆する京都大学保健センターの河村孝教授らのある実験が紹介されている。河村教授らは、3つの実験群を作った。
①うがい液(ヨード液)でうがいをする群
②水道の水でうがいをする群
③特にうがいをしない群
この実験に協力したのは、387人。①については、うがい液の濃度を決めた。また、①~③については、うがい回数を共通にするなど、比較のための条件を取り決めた。
結果は、②「水道の水でうがいをする群」が最も風邪をひかないことが分かった。発症率は、次の通りである。
①うがい液(ヨード液)でうがいをする群:23.6%、
②水道の水でうがいをする群:17.0%、
③特にうがいをしない群:26.4%
◇ヨードが常在菌を殺す
このような結果になったのは、ヨードには細菌を殺す能力はあっても、風邪のウイルスを殺す能力はないからだ。しかも、殺される細菌は、ウイルスや病原菌を防ぐ常在菌(人間がもともと持っている菌)である。常在菌が減って、かえって風邪を引きやすくなるのだ。
このケースは最初、『週刊金曜日』が取りあげたらしい。本来、こうした消費者利益にかかわるニュースは、「社会の公器」を自称する新聞やNHKが取りあげなければならないが、メーカーに「忖度」しているのか、避けているようだ。
最初に取りあげた媒体が、『週刊金曜日』で、それを書籍したのが幻冬舎だった点も興味深い。やはりジャーナリズムの本道は、雑誌と書籍である。
著者:渡辺雄二
版元:幻冬舎