1. 「EUはラテン・アメリカの二の舞を演じている」、ギリシャの悲劇にエクアドルのラファエル・コレア大統領が警鐘

ラテンアメリカに関連する記事

2015年07月15日 (水曜日)

「EUはラテン・アメリカの二の舞を演じている」、ギリシャの悲劇にエクアドルのラファエル・コレア大統領が警鐘

【サマリー】ギリシャ危機のキーワードは、「緊縮策」である。が、この「緊縮策」という言葉は分かりにくい。結論を先にいえば、それは新自由主義である。ラテンアメリカは、1980年から1990年代にかけてIMFより融資の条件として新自由主義を押しつけられた。その結果、財政が破綻した。

同じ悲劇がEU諸国で起ころうとしている。こうした実態に、エクアドルのラファエル・コレア大統領が警鐘を鳴らしている。

意図的に難解な言葉を使って物事の本質を隠すのは、世論誘導の典型的な手段である。ギリシャの金融危機を報じる際にメディアが盛んに使っている言葉のひとつが、「緊縮策」である。

「緊縮策」という言葉がかもしだすイメージは、お金の無駄づかいや浪費を改める政策だ。が、その政策の中身は、国民の生活権や尊厳を守るために必要不可欠な予算をカットする政策にほかならない。

事実、EU側は、ギリシャ政府に対する借換融資の条件として、年金の支給開始年齢を5年も引きあげることなどを要求してきた。

「緊縮策」とは、正しくは新自由主義のことである。新自由主義に基づいた「緊縮策」を採用することで、「小さな政府」を構築して、医療や福祉など公的支援の範囲を縮小する一方で、政府が放棄した公的サービスを民間企業へ新市場として提供する企業利権がらみの政策である。

EUは、融資の条件として、新自由主義をギリシャに押しつけてきたのである。

ちなみに安倍政権が押し進めているのも、新自由主義である。福祉や医療などの「緊縮策」を前面にだしながら、同時にITなど将来が有望視される産業に対しては、財政支援を積極的に行う型の新自由主義である。

◇「EUはラテン・アメリカの二の舞を演じている」

しかし、新自由主義が経済政策として機能しないことは、ギリシャに例を取るまでもなく、既に同時代史が証明している。その典型はラテンアメリカである。

2013年、『ルモンド』は、エクアドルのラファエル・コレア大統領によるcと題する講演を収録している。

IMFなどの国際金融機関はラテンアメリカ諸国に対して、融資の条件として新自由主義の政策を実施するように押しつけたのである。

1980年代初頭、ラテン・アメリカだけではなく世界中で新型の開発モデルが頭角を現し始めた。《新自由主義》である。開発戦略に関するこの新しい総意には「ワシントン・コンセンサス」という異名がついたが、それはその主要な企画と推進を、ワシントンに本部を置く多国籍金融機関が行なっていたからである。

今流行りのロジックで言うと、ラテン・アメリカに危機をもたらしたのは、国の経済が過度に干渉されたこと、適切な自由価格システムがなかったこと、国際市場から離れた場所にあること、などである。こういった特性の根源は、輸入に代えて国内産業を活性化させようという[新自由主義の]中南米モデルにあったのだ。

今EUを苦しめている債務は、新自由主義的原理主義によって生み出され悪化したものである。われわれは世界各地域の主権や独自性を尊重はするが、いかにも賢明なヨーロッパが、ラテン・アメリカが過去に犯した過ちをあらゆる点で繰り返しているのを見て、驚いている。

■ラファエル・コレア大統領の講演PDF

◇ラテンアメリカの激変

しかし、歴史というものは皮肉なもので、ラテンアメリカは新自由主義の悲劇を経験したがために、今世紀に入る直前から急激に変化した。新自由主義からの脱却をはかり、きわめて柔軟な左翼よりの路線を選択しはじめたのだ。

ベネズエラを筆頭に、次々と左派、あるいは中道左派の政権を誕生させた。それしか選択肢がなかったのだ。もちろんこうした流れが生まれた背景には、長いあいだラテンアメリカの民族自決が踏みにじられて、その反動として伝統的に社会運動が活発だった事情もあるが、最大の要因は新自由主義の失敗である。そこへ政治の力学が働いて、新しい歴史の段階へと踏み出したのである。

最終的なゴールが「企業がいちばん活動しやすい国」ではなく、福祉国家の実現にあることはいうまでもない。