中米エルサルバドルのロメロ大司教の暗殺から37年、内戦の発端を記録した動画
中米エルサルバドルのロメロ大司教が亡くなって、3月24日で37年になる。ロメロ大司教は、軍部が幅をきかせ、人間としての最低の生活権すらも奪われていたエルサルバドル民衆の声を代弁する人だった。常に貧しい人々の側に立っていた。
そのために政府は言うまでもなく、カトリック教会の上層部内でも批判の対象となった。ミサの場では、公然とエルサルバドル軍による暴力を非難した。いわるゆ「解放の神学」の先駆的な実践者である。
1980年3月24日、ロメロ大司教はミサの最中にエルサルバドル軍の傭員に狙撃され亡くなった。しかし、軍の暴力はこれで終わったわけではなかった。首都の大聖堂で行われたロメロ大司教の告別式に集まってきた人々の群れに向かって、無差別に銃を発砲したのである。
紹介したYouTubeは、その時の様子を映像ジャーナリストが撮影したものである。貴重な記録だ。
わたしはこの事件がエルサルバドル内戦(1980年~1992年) の引き金になったと考えている。もちろんそれ以前から、極端な社会的格差など内戦を誘発する客観的な条件はあったのだが、この事件で平和的な社会問題の解決が不可能であることが明らかになったのである。
この画像で最も興味深いのは、最後の1分(8:00)あたりからである。ラテンアメリカの人々の気質を典型的に示す場面が映っている。ピストルを持った人々が、ただちに反撃の体制を敷いているのが確認できる。
この年の10月、5つのゲリラ組織が統一して、FMLN(ファラブンド・マルティ民族解放戦線)を結成した。そして首都へ向かって大攻勢をかけたのだ。エルサルバドルは内戦状態に入ったのである。
FMLNは1992年に和平が成立した後、合法政党に生まれかわった。そして2009年に大統領選挙で勝利して政権の座についた。現政権は2期目である。