1. 化学物質過敏症に取り組む7団体が院内集会、厚生労働省などに「香害」の対策を申し入れ

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2018年05月23日 (水曜日)

化学物質過敏症に取り組む7団体が院内集会、厚生労働省などに「香害」の対策を申し入れ

日本消費者連盟など化学物質による人体影響に警鐘を鳴らしている7つの市民団体が、22日、東京永田町の衆議院第1議員会館で院内集会を開き、「香害」の実態を報告した後、消費者庁、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の4省庁に対策を取るように申し入れた。

集会を共催したのは、日本消費者連盟、化学物質支援センター、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、日本消費者連盟関西グループ、香料自粛を求める会、反農薬東京グループ、VOC研究会の7団体。

◇水面下で広がる健康被害

「香害」とは、芳香剤や柔軟剤に使われている化学物質が引き起こすアレルギー症状のことである。化学物質過敏症の一種である。

院内集会での報告によると、昨年の夏、日本消費者連盟の洗剤部会が「香害110番」を開催したところ、2日間で65名の電話相談があったという。その中には、たとえば飛行機の機内サービスで提供されるおしぼりに香料が使われていたために、体調が悪くなったという相談などがあった。報告者の杉浦陽子さんは、

「善意のサービスが、健康被害を増やすことになっている」

と、コメントした。

「香害110番」の反響が大きかったこともあり、日本消費者連盟が他の市民団体に問題提起をしたところ、運動が急速に広がった。

院内集会の参加者の中には、東京近郊はいうまでもなく、北海道から惨状を訴えるために上京した男性もいた。一旦、化学物質過敏症になると、極めて微量の化学物質に被曝しても、体が反応するようになるが、その度合いは個人差が極めて大きい。

そのために患者の家族など患者を取り巻く人々が病気をよく理解できずに、患者が孤立することも少なくない。たとえば、集会に参加したある患者は、電車の座席に坐る際に、座席に付着した化学物質を避けるためにアルミシートを敷くなどの対策を取らざるを得ない、と化学物質による人体影響を報告した。

また別の患者で元音楽教師の女性は、柔軟剤の化学物質が原因で、退職を余儀なくされたあげく、治療に全貯金を使ってしまったと体験を語った。

児童の被害例としては、教室の中で浮遊している衣服の柔軟剤などが原因で、体調を崩し登校が困難になるケースも報告された。幼児なので体の不調を具体的に説明するだけの知識がなく、対策が取れないまま放置されることもままある。

化学物質が氾濫している現代において、化学物質過敏症はだれもが等しくリスクを負っている疾患である。ただ、人体に対する汚染が一定レベルに達するまでは、なかなか症状が表面化しない場合もある。しかし、一旦発症すれば、生活に支障をきたすほど重症化することも少なくない。

その意味で新世代の深刻な公害なのである。化学物質支援センターの広田しのぶさんは、

「患者さんは、カナリアのような存在です」

と、被害者との共生の重要性を強調する。

◇予防原則を無視する省庁

こうした深刻な実態が広がっているにもかかわらず、省庁サイドの対応は欧米に比べてかなり遅れている。その原因のひとつが、科学的な根拠が医学的に立証されるまでは、腰を上げない省庁の姿勢である。「予防原則」をあえて無視することで、問題を放置しているといえるだろう。

集会の最後に共催者らは、省庁間で協働して解決に努めるように要望した。

 

消費者庁に対する要望書(PDF準備中)