公共のテレビCMに「間引き」疑惑、放送確認書の開示をはばみ続ける総務省
政府広報のCMは、本当に契約書の仕様に従って制作され、放送されているのだろうか。それを疑わせる事実を紹介しょう。
筆者は、今年の4月13日に、次の文面で、総務省に対して情報公開請求を申し立てた。
現在、総務省が保管しているテレビCMの放送確認書の全部
放送確認書とは、テレビCMが放送されたことを証明する文書のことである。1990年代の後半に民放放送局で、テレビCMの「間引き」が発覚し、民放連や日本広告主協会などテレビや広告関係の団体が共同で対策に乗りだした。そして放送確認書を発行するシステムを開発したのである。
放送確認書を発行するシステムは、コンピューターと連動したものである。制作したテレビCMに10桁コードを付番してコンピューターに入力しておくと、実際にそれが放送された時点で自動的に10桁コードが記録される。それをプリントアウトした書面が放送確認書だ。
従って放送確認書に10桁コードが印字されていれば、テレビCMが放送された証となり、印字されていなければ、何らかの事情で放送されなかったことになる。何らかの事情とは、たとえば、プロ野球放送の延長や、自然災害の中継など臨時の特別番組が組み込まれた時などである。
広告主は、これを見て自分がスポンサーになったテレビCMが本当に放送されたかどうかを確認するのだ。
このシステムは2000年から導入された。現在では、民放連に加盟する放送局に対しては、導入が義務づけられている。衛星放送協会に加盟する放送局も放送確認書のシステムを導入している。いわば日本の放送界では、常識となっているシステムなのだ。もちろんテレビCMのスポンサーも知っている。
当然、筆者は総務省が放送確認書が何かを知っているものと思っていた。事実、確か3月だったと記憶しているが、国勢調査のテレビCMの放送確認書の開示を請求した際に、総務省は廃棄したと回答している。この回答を受けて、筆者は、現在保存されている全部の放送確認書の開示を申し立てたのである。
◇総務省による情報隠しの手口
ところが総務省は4月17日に、「行政文書開示請求書の補正について」という文書を筆者に送付して、開示を希望する文書をもう少し具体的に特定するように求めてきた。筆者は、総務省が放送確認書が何であるかを知らないことに驚いた。放送界や広告界では知らない者はまずいない。当然、放送を管理している総務省のテレビ担当者も知っているものと思っていた。
私は次のような文章で希望する文書を特定した。
現在、総務省が保管しているテレビCMの広義の放送確認書の全部
最初に定義した文章に、あえて「広義」を加えて、「広義の放送確認書」としたのである。と、いうのも放送確認書のタイトルは、放送局により、若干異なっているからだ。たとえば、テレビ東京は「タイムテレビ 放送確認書」、フジテレビは「タイム放送確認書」、TBSは「テレビスポット放送確認書」となっている。「広義」を加えることで、総務省による情報隠しの抜け道をなくしたのである。
ところが私の回答に対して総務省は、5月11日に、「行政文書開示請求書の補正について(2)」と題する文書を再び送付してきた。この中で、「『テレビCMの広義の放送確認書』がどのような文書か判然としないため、当省が開示する行政文書を特定することができず、手続を進めることができません。つきましては、開示する行政文書を特定するため、『テレビCMの広義の放送確認書」がどのような情報が記載された文書なのか、別紙に明記していただけますようにお願いします。」と通知してきたのだ。
筆者が回答しない場合は、「テレビCMに関する『放送確認書』という名称の文書のみについて、当省における保有状況を確認のうえ、開示決定等の手続を進め」るという。つまり「放送確認書」の頭に「テレビタイム」、「テレビスポット」や「タイム」が付いている放送確認書は、開示しないということである。
これが総務書による情報隠しの手口である。あるいは情報を隠す以前に、放送確認書そのものが存在しない可能性もある。つまり制作も放送もぜすに、お金だけ広告代理店に支払った可能性--つまりテレビCMの「中抜き」疑惑があるのだ。
「行政文書開示請求書の補正について(2)」に対して、筆者は回答しなかった。予測どおりに、総務書は筆者に何の書類も送付してこない。2ヶ月近くになるが、音沙汰がない。
政府のテレビCMが制作も放送も行われていないのであれば、総務省はそのための国会予算を広告代理店にプレゼントしたことになる。今後、徹底した検証が必要ではないか。
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