疑惑に満ちた横浜市の「開国博Y150」、博報堂JVとの契約額は約62億円
博報堂事件で新たな検証点が浮上している。
2009年4月28日から9月27日までの日程で、「開国博Y150」と題する博覧会が横浜市で開かれた。主催者は、「財団法人横浜開港150周年協会」(以下、協会)で、この団体の監督官庁は神奈川県だった。
「開国博Y150」にも、イベントの企画者として、博報堂がかかわっていたことが分かった。
このイベントは、当初、500万人の有料入場者数を達成することを目標に立案されたが、実際は123万人の入場者しかなかった。その結果、協会は巨大赤字を抱え込んだ。当然、未払い金が発生する。それが引き金になって、裁判所が介入した6件の係争が勃発したのである。
◇市民オンブズマンによる提訴
係争の中には、「横浜市民オンブズマン」と「かながわ市民オンブズマン」が、林文子横浜市長に対して起こした訴訟もある。「開国博Y150」が開かれた当時の市長は、林氏ではなく、中田宏氏だったが、その中田氏が協会に補助金を支出したのは「公益上の必要を欠く違法な決定」として、中田氏に約78億円の損害賠償を求めるように、訴訟というかたちで林市長に迫ったのである。
判決は、オンブズマン側の敗訴だった。
中田宏氏には資金の使い方に関する疑惑がかかった。その中田氏は、事件の渦の中で市長を辞任して、杉並区長の山田宏氏らと政治団体「よい国つくろう!日本志民会議」を結成して、中央政界へと近づいていく。しかし、議員の椅子は獲得できなかった。
◇博報堂と協会の特別調停事件
もうひとつの注目すべき係争は、博報堂JV(博報堂等協同企業体)と協会の間の特別調停事件である。協会が博報堂JVと交わした契約額は約61億9000万円だった。しかし、未払い金が約34億円も発生したので、そこからの減額を協会側は求めた。未払い金をどう処理するかが争点になったのだ。
博報堂JVと協会が交わした約61億9000万円という契約額がそもそも妥当な額だったのだろうか。この点を、今後、再検証しなければならない。筆者は、既に関係資料の一部を入手しているが、それによると博報堂との契約は概算契約だったようだ。つまり、後付けで、次々と請求額を増やしていける客観的な条件があったようだ。
博報堂による後付け請求の手口については、「博報堂VSアスカコーポレーション」の係争の中でも、その実態が明らかになっている。たとえば次の記事である。
福島の被災地でもビジネス感覚の博報堂、アスカ支援のクリスマスイベントで「後付け」の高額請求1250万円
2010年にアスカが特別協賛企業として、資金援助を行った福岡市の大濠公園でのイルミネーションイベントでも、当初、3000万円を限度とする支援約束だったが、イベントが終わった後、博報堂は5500万円を請求している。
「開国博Y150」は、福島や大濠公園のイベントとは、比較にならないほど大きく、当然、予算規模も大きい。博報堂が同じ方法で、後付けの請求をしていないか、今後、資料を分析する必要がある。
◇郵政事件と「開国博Y150」
「開国博Y150」は、既に述べたように2009年に行われたイベントである。この時期は、おりしも博報堂がからんだ郵政事件が発覚した時期だ。
郵政事件というのは、日本郵政公社が4社に分割され、民営化される際に博報堂が4社のPR業務を一括して引き受ける特権を勝ち取り、その後、法外な請求額が発覚した事件である。総務省もこれを問題視して、独自に調査した。その調査報告書によると、郵政側の一部の幹部が博報堂から繰り返し接待を受けていた事実がある。報告書の一部を引用しておこう。
「博報堂には民営化後の平成19年度の同グループの広告宣伝費約192億円(公社から承継された契約に係る部分を含む)のうち約154億円(全体の約80%)が、平成20年度の同247億円のうち約223億円(同約90%)が各支払われている」(『日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会報告書の「別添」・検証総括報告書』、2010年)【博報堂関連の記述は29ページから】