視聴率の偽装がCPO(1顧客獲得あたりの費用)に及ぼす影響
→広告代理店の職能比較、CPO(1顧客獲得あたりの費用)は電通と東急が7万円、博報堂は150万円
既に述べたようにCPOとは、新規の顧客一人を獲得するために費やした販促費用のことである。CPOの金額が低ければ、低いほど、効率的に新規の顧客を獲得していることになる。逆に金額が高ければ、高いほど販促費の規模に見合った顧客獲得が出来ていないことを意味する。
博報堂と係争中のアスカコーポレーションよると、2008年を境界線として、同社のCPOは急激に悪化する。この年から、博報堂がアスカのPR業務を独占するようになっていた。それまでは東急エージェンシーと電通が中心的な位置を占めていた。
東急エージェンシーと電通の時代のCPOは、7万円程度(非公式の数字)で、博報堂の時代になってから、次のような金額になった。
2009年 220,876円
2010年 240,643円
2011年 220,019円
2012年 432,065円
2013年 922,760円
2014年 1,139,010円
2015年 1,538,897円
原因としてCMが「間引き」されていた可能性(その有力な根拠のひとつは、CMに10桁コードが付番されていないものが多量に発生していることなど)情報誌の制作にかかわる不正請求、タレント料の高騰などがある。
ここまでが昨日の記事の趣旨である。
◇視聴率とCPOの関係
さて、博報堂がアスカの業務を独占するようになったのちCPOが急激に増えた原因として、視聴率の問題も検討してみなくてはならない。これは今後の調査の重要な項目になりそうだ。
CM(通販番組を含む)を制作する場合、広告代理店は、クライアントに番組提案書を提示して、CMの内容を提案する。この番組提案書で広告代理店が推薦する番組枠が視聴率と共に提示される。
改めて言うまでもなく、視聴率はクライアントが放送枠を購入する際の最も重要な判断材料となる。その視聴率を博報堂が偽装していた事実が明るみに出ているわけだが、CPOについて考察する場合、視聴率の偽装がCPOに及ぼす影響も検証項目に加えなければならない。
仮に5%の視聴率しかない番組枠を、10%に偽装してクライアントに買い取らせた場合を想定してみよう。番組枠の価格は、視聴率と連動して上下する基本原則があるわけだから、低い視聴率の番組枠を高い放送枠の価格で購入すれば、投資の割には、CM効果が上がらないことになる。
その結果、CPOは高くなる。ただ、具体的な損害を計算するとなれば、専門家のアドバイスが必要になるだろう。もちろん、今のところメディア黒書で試算する予定はない。視聴率の偽装がCPOに影響を及ぼす原理を指摘するにとどめる。
◇無断で放送枠を変更
さらにCPOに影響を及ぼす可能性があるものに、CMが放送される時間帯の変更がある。たとえば視聴率10%の番組枠を購入していながら、放送局が自分勝手に視聴率5%の番組枠に変更すれば、当然、投資の割にCM効果があがらない。
この問題は、今後、調査してみるが、現段階で確実に分かっているのは、アスカの承諾を得ずに、勝手に番組枠が変更されているケースが判明している事実である。
たとえば博報堂がアスカに提示した2009年10月の番組放送予定表によると、テレビ朝日で木曜日にCMが放送される取り決めになっていたが、同年11月に発行された放送確認書には、木曜日ではなく水曜日に放送されたとする記録が残っている。次の画像が、裏付けの証拠だ。
これは放送局がCMを放送する時間帯を変更した結果にほかならない。
変更前の番組枠の視聴率と変更後のそれを比較して、変更後の番組枠がより低い視聴率であれば、投資の割りにCM効果があがらないことになる。当然、CPOも高くなる。この点についても調査が必要だ。
こんなふうに視聴率の改ざんによっても、CPOの数値は変わる原理があるのだ。