1. 読売の渡辺恒雄会長が安倍首相と会食を重ねる、言論界に重大な負の影響

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2015年02月09日 (月曜日)

読売の渡辺恒雄会長が安倍首相と会食を重ねる、言論界に重大な負の影響

時事通信の「首相動静」によると、2月5日に読売新聞グループの主筆で会長、新聞文化賞受賞者の渡辺恒雄氏が、安倍晋三首相と会食した。会食場所は、東京・飯田橋のホテル・グランドパレスにある日本料理店「千代田」である。

安倍首相が同ホテルに到着したのは、午後6時41分。会食を終えて私邸へ向かったのは、8時35分であるから、約2時間にわたって会話を交わしたことになる。何が話し合われたのかは分からない。

渡辺・安倍の両氏が会食を繰り返してきたことは、これまでもたびたび報じられてきた。たとえば2014年12月30日付けの『しんぶん赤旗』によると、それまでの会食回数は8回にも及んでいる。

取材目的の会食であれば、頭から批判するわけにもいかないが、渡辺氏がルポタージュを書くための取材を進めているという話は聞いたことがない。

ちなみに『しんぶん赤旗』によると、渡辺氏のほかにも読売関係者は、安倍首相と会食を重ねている。

白石興二社長:2回
論説主幹:7回
政治部長:1回

何が目的で政治家と広義のジャーナリストが会食を重ねているのか、目的は定かではないが、最近の新聞業界の動きを見ると、会食を通じた情交関係が有形無形のかたちで、新聞紙面や新聞人の言動に影響を及ぼしているのではないかと勘ぐりたくなる。

◇朝日記者のシリア取材

たとえば読売の紙面が以前にもまして政府よりになっている点である。実例として引くのは、MEDIA KOKUSYOで既報した次の記事である。

■朝日の複数記者、外務省が退避要請のシリア入国(読売新聞 2015年01月31日 13時33分)

 【特集 邦人人質】
 
 イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループによる日本人人質事件で、外務省が退避するよう求めているシリア国内に、朝日新聞の複数の記者が入っていたことが31日分かった。

 同省は21日、日本新聞協会などに対し、シリアへの渡航を見合わせるよう強く求めていたが、朝日のイスタンブール支局長はツイッターで、26日に同国北部のアレッポに入り、現地で取材した様子を発信していた。

この報道がなぜおかしいのだろうか? それは、政府の方針から独立して取材活動をすることが常識になっている新聞記者の「抜け駆け」に、恐らくはデスクがニュース価値を感じて記事掲載に踏み切っているからだ。「あたりまえの事をなぜ記事に」という滑稽感があるのだ。

朝日記者の行動を問題視する「優等生」的な視点があるデスクでなければ、このような記事を掲載しようという発想そのものが起こりえない。

ちなみになぜ朝日記者の行動が正しいのかは単純だ。だれかが紛争地帯の内部に入らなければ、そこで本当に何が起こっているのかが分からないからだ。事実を把握しなければ、政府すらも方針を立てようがない。それを禁止するのは、事実を正確に確認しないまま政策を決める愚行に等しい。

安倍内閣がやっているのは、その愚行にほかならない。

余談になるがTBSの報道特集によると、イスラム国に詳しいヨルダンの評論家は、人質事件に対する日本政府の対応を酷評している。安倍首相は決定的な3つの過ちを犯したという。

①人質事件への対応が大幅に遅れた。

②中東訪問で、「テロ対策」に言及した。

③対策本部をトルコではなく、ヨルダンに設置した。

◇利害関係の構図

さらに一連の会食と並行して、新聞に対する消費税軽減税率の問題が政治の重要なテーマになっている事実も見過ごすことができない。会食の場で、渡辺氏と安倍首相が消費税の軽減税率について話したかどうかは不明だが、かりに新聞業界のこの要望を政府が受け入れた場合、国民の多くは、「会食効果」と推測するだろう。

結果、新聞ジャーナリズムは、ますます信頼を失うことになる。しかも、負の影響は読売一社に限定されない。他の新聞社はいうまでもなく、書籍出版の業界にもおよびかねない。

と、言うのも出版社も、新聞社と同様に軽減税率の恩恵を受けるからだ。逆説的に言えば、こうした利害関係の構図が、マスコミ業界全体に安倍首相と渡辺氏の会食を厳しく批判しない空気を生み出しているのである。

政府によるメディアコントロールと軽減税率の問題は、密室の中で同時進行しているのである。