1. テレビの大罪、「イノベーション→お金→幸福」のPR、同時代における洗脳の柱

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2015年06月16日 (火曜日)

テレビの大罪、「イノベーション→お金→幸福」のPR、同時代における洗脳の柱

最近、メディアを通じて頻繁に耳に入ってくる言葉に「イノベーション」がある。「イノベーション」とは、ウィキペディアによると、

物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。一般には新しい技術の発明を指すと誤解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す。

と、いう概念である。

「イノベーション」が不要と考える人はまずいない。社会は進化の方向へ脱皮していかなければ、消滅するからだ。

安易に「イノベーション」を批判すれば、保守派、あるいは奇人・変人扱いされかねない。それだけに逆説的に考えれば洗脳の道具になりやすい。

最近のテレビの特徴として、「イノベーション」を発揮すれば、だれでも弱肉強食の世の中を幸福に生きられるという暗黙のメッセージが感じられる番組が急増していることだ。

たとえば農作物をブランド化することで、新しいビジネスを切り開こうとしている人々の姿。大学発のビジネスを立ち上げようとしている人々の姿。グルメで「町おこし」に挑戦する人々の姿。

あたかも丸太小屋から大統領へというアメリカン・ドリームのパターンの日本版を大々的にPRしているような印象がある。悪質な幻想である。

◇「イノベーション→お金→幸福」

こうした現象の背景に新自由主義=構造改革の政策があることは間違いない。国際競争に勝ち残るために企業が海外へ進出し、国内産業の空洞化が進んでいるわけだから、新しい分野のビジネスを育成しなければ、日本経済が破たんしてしまうことは理解できるが、たとえば農業やグルメをビジネス化したところで、それで巨大市場を形成できるとは思えない。

成功した少数の者がそれなりの収益を得るだけで、それが日本の主要産業になることはまずあり得ない。労働法制を改悪して、日本を企業にとっていちばんビジネスがしやすい国に変え、対日投資を増やしても、賃金そのものが、抑制されているわけだから、大半の人々の生活水準は低下する。

ところがテレビは、盛んに「イノベーション」とバラ色の未来をPRしている。まして新自由主義=構造改革のからくりなどにはまったくふれない。

日本には、「イノベーション→お金→幸福」という価値観が広がっている。支持政党を決める際にも、経済政策が重視される。つまり自分にとって「お金儲け」の「支援」をしてくれる政党を支持する人が多いのが実態だ。

お金よりも、人権や人間の尊厳を守ることを重視する政治を求める人は少数派だ。こうした傾向を生んでしまった背景にメディアの責任があることは言うまでもない。