1. クローズアップ現代『 あしたが見えない 深刻化する”若年女性”の貧困』にみるNHKの限界

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2014年02月06日 (木曜日)

クローズアップ現代『 あしたが見えない 深刻化する”若年女性”の貧困』にみるNHKの限界

NHKが1月27日に放送したクローズアップ現代「あしたが見えない  ?深刻化する"若年女性"の貧困」は、NHKジャーナリズムの限界を露呈している。結論を先に言えば、若い女性の間で極端な貧困が急激に広がっている実態は伝えているが、このような社会現象の原因が、構造改革=新自由主義にあることを隠しているのだ。

番組は、次のようなナレーションで始まる。

?「学校を卒業後非正規の不安定な職にしかつけない女性が増加し続けています。」

「今、働く女性の3分の1が年収114万円未満」

「なかでも深刻化しているのが、10代、20代の貧困です」

◇大企業の内部留保は260兆円

かつて海外メディアは日本人を、「働きすぎ」とか、「会社に忠誠すぎる」と評した。実際、上司が帰宅するまで、部下も仕事を続けることが慣行化している会社はめずらしくなかった。昔から日本人は、延々と「働く」ことを強要されてきたのだ。長時間労働は今に始まったことではない。

しかし、現在と過去では、決定的に異なる部分がある。それは賃金である。むかしは働けば、最低限の生活は維持できたが、今はいくら働いても、極貧から抜け出せない人が増えている。

このような変化が生じたのは、構造改革=新自由主義の政策のひとつとして、自民党が派遣労働の規制緩和を進めたからである。勤労者が多様な働き方を自由に選択できる制度というのが、規制を緩和した表向きの理由のようだが、本当の理由は別にあったようだ。

経営者が際限なく高い利益を得られる労働市場へ「構造」を「改革」するのが、派遣の枠を広げた主目的にほかならない。さらに安倍内閣は、3年に定められている派遣の期限を、無期限に「改正」しようとしている。さらに規制を緩和しようとしているのだ。

構造改革=新自由主義の結果、大企業の内部留保は260兆円にも達している。大企業にとっては、不況どころではない。構造改革=新自由主義が大企業に、空前の儲けをもたらす例は、米国でも英国でも、そしてチリでも証明済みである。

◇国際ビジネスのための法整備

しかし、自民党が構造改革=新自由主義を推進することで、目指しているのは、低賃金と使い捨ての制度を構築することだけではない。それにより、多国籍企業にとっての「天国」をつくり、海外の企業を日本へ招く目的がある。それにより「不況」から脱しようとしている。

当然、多国籍企業にとってメリットがある労働法制を整備しようという思惑もある。

司法制度改革により、弁護士の数を増やし、それに伴って国際業務ができる弁護士が急増した背景にも、構想改革=新自由主義の導入がある。たとえば次の弁護士事務所のウエブサイトで紹介されている弁護士のプロフィールに注意してほしい。全員がバイリンガルである。

■TMI総合法律事務所

司法制度改革もその一端である。司法制度をグローバルスタンダードにすることで、多国籍企業の要望に応えようという発想だ。事実、司法制度改革が本格化したのは、ドラスチックに構想改革=新自由主義を進めた小泉政権の時代である。

2001年に、小泉首相を本部長とする司法制度改革推進本部が発足して、多国籍企業のための法整備が始まったのである。

■司法制度改革推進本部・本部員の人事??

つまり超低賃金で働く制度を構築し、法整備を行い、さらには秘密保護法などで治安を強化して、多国籍企業が主役となる社会を築く政策が進行しているのだ。

若い女性の貧困化は、構造改革=新自由主義の結果にほかならない。しかし、NHKは絶対に、この点には言及しない。

そのために「 あしたが見えない  ?深刻化する"若年女性"の貧困」を見ると、不運か自己責任により若い女性の間に貧困が拡大しているような印象を受ける。

が、それは個人の責任ではなくて、客観的な別の原因があるのだ。NHKはそれを完全に隠している。ここがNHKジャーナリズムの限界にほかならない。