1. やっぱり歪んでいる池上彰氏のニュース解説、英国の元首相・サッチャーの新自由主義「改革」を評価する愚

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2019年05月16日 (木曜日)

やっぱり歪んでいる池上彰氏のニュース解説、英国の元首相・サッチャーの新自由主義「改革」を評価する愚

テレビ朝日の「グッド!モーニング」(4:55~8時)の中に、「池上彰のニュース検定」というセクションがある。クイズ形式で社会科の問題を出題して、3つの選択肢から答えを選び、池上氏が「正解」の解説をする。まるで高校社会科の授業か、「お受験」の現場をテレビで再現しているかような内容だ。

それ自体が悪臭を放つ滑稽な光景だが、その内容が実にあきれている。池上氏に世論誘導の意図があるのではないかとすら思わせる出題も含まれている。ぼんやりと画面に見入っていると、メディアリテラシーの視点が遠ざかり、音声と映像に洗脳されかねない。

15日の出題は、「80年代にイギリスがストライキなどで混乱に陥った時代を打開したのは、チャーチル、サッチャー、ブレアのうちだれか?」という趣旨の出題だった。正確な設問は思い出せないが、そういう趣旨のものだった。

「お受験」の世界史であれば、答えは一応、正解は「サッチャー」ということになるが、池上彰氏による解説には、笑ってしまった。高校世界史や池上氏の解説の欺瞞性(ぎまんせい)を露呈していた。
確かにサッチャーは、「改革」を進めた首相には違いないが、その「改革」が新自由主義による構造改革であることを池上氏が隠していたからだ。隠した上で、サッチャーが素晴らしい「改革」を断行したと解説したのである。

が、「改革=善」ではない。「改革」の中には、弱者の生存権を脅かす大企業のための改革もあるのだ。

サッチャーが行った改革とは、水道やガスなどを供給していた国有企業を民営化し、規制緩和を緩和し、労働組合を弾圧し、法人税を引き下げて消費税を15%にまで引き上げたことである。「改革」は改革でも、新自由主義の「改革」にほかならない。

が、新自由主義という根本的な政策にはふれずに、一般論としてサッチャーの「改革」を高く評価したのである。高校の社会科の授業でも、やはり池上氏と同じような解説が行われるだろう。社会を捉える視点が微妙に歪んでいるのだ。「改革=善」とう前提にたった出題そのものがおかしいということになる。

◆テレビはなるべく見ないほうがいい

もっともテレビ放送であるから、池上氏の視点がそのまま番組に反映されているとは限らないが、新自由主義者のメッセンジャーになり、結果として、洗脳の役割を果たしていることは間違いない。公の場での発言には責任を伴うのだ。

マスコミは口をつぐんでいるが、小泉構造改革から後の自民党政治もサッチャーによる「改革」と基本的には同じ路線である。「改革」には違いないが、それは新自由主義を導入するための構造改革にほかならない。この点についての詳しい解説を回避してジャーナリズムは成立しないのでは。

テレビ朝日と池上氏は、サッチャーを高く評価しながら、実は、自民党政治を応援しているのだ。洗脳の落とし穴は、思わぬところに潜んでいる。

テレビはなるべく見ないほうがいい。