1. 電通を恐れて私の出演をドタキャンしたMX「ニュース女子」が大炎上中

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2017年01月10日 (火曜日)

電通を恐れて私の出演をドタキャンしたMX「ニュース女子」が大炎上中

執筆者:本間龍(作家)

東京MXテレビの「ニュース女子」(月曜22時~)という番組が、ロクな取材もせず沖縄の基地反対運動を誹謗中傷したとして各方面から非難を受けている。口火を切ったのは1月7日付東京新聞の「こちら特報部」の記事だった。(以下抜粋)

 こちら特報部 東京のTV「基地反対派に日当」 「沖縄ヘイト」まん延 名指しされた団体「まごう事なき悪意」(2017/01/07 東京新聞朝刊)

 東京ローカル局のニュースバラエティー番組が、沖縄県の米軍基地反対運動を「日当をもらっている」などと攻撃した。反対派は「沖縄ヘイトの典型だ」と猛反発している。
 問題の番組は「東京メトロポリタンテレビジョン(通称・TOKYO MX)」(東京都千代田区)で二日に放送された「ニュース女子」。

沖縄の基地問題の特集コーナーで、軍事ジャーナリストの井上和彦氏が沖縄を訪れたVTRが流れ、「万が一逮捕されても影響が少ない六十五歳以上を過激デモ活動に従事させている」として、反対派に「シルバー部隊」がいると説明。「反対派の暴力行為で住民も現場に近づけない」と、反対派を「テロリスト」に例えた。

 また、ヘイトスピーチやレイシズムに反対する団体「のりこえねっと」(新宿区)を紹介し、「反対派は日当をもらっている」「何らかの組織に雇われている」と推測した。

 VTRの後、井上氏はスタジオで「韓国人はいるわ、中国人はいるわ。何でこんな奴らが反対運動やってるんだと地元の人は怒り心頭」と主張。元経済産業省官僚の岸博幸氏は「実は沖縄の人はみんなアメリカが好き」と決めつけた。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏は、のりこえねっと共同代表の辛淑玉氏を「在日韓国人の差別と戦ってきたカリスマでお金がガンガン集まる」とやゆした。

 のりこえねっとは五日付で、「辛淑玉を誹謗(ひぼう)中傷する虚偽報道に対する抗議声明」を公表した。辛氏は、「MXの取材も連絡も一切受けていない」として「金でしか人間関係を築けない人は身銭を切って正義や人権のために動く人が理解できない。番組は沖縄で踏ん張って生きる人を侮辱した、まごう事なき悪意。沖縄ヘイトの典型だ」と批判する。

◇「私が出演しても大丈夫か」

この「ニュース女子」は東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏がMCを勤め、右派系の評論家や作家を集めての左派やリベラル攻撃、政権擁護が目に余る番組だったが、ロクに取材もせず、確たる証拠もなく多くの人々を誹謗中傷したからには、その責任は重大だと言わざるを得ない。しかし東京新聞からの取材にもMXは反論できておらず、公式発表もないままだ。

偶然だがこの「ニュース女子」と私は浅からぬ因縁がある。実は昨年10月初旬、この番組から私に出演オファーが来たのだ。9月24日にネット関連業務の不正請求発覚で電通が記者会見を開き、それ以前にもオリンピック招致にまつわる裏金疑惑などもあったので、電通に関して話をして欲しい、ということだった。

正確にいうと、この番組はDHCという化粧品会社がボーイズという関西の制作会社に作らせている持ち込み企画で、要するに通販番組などと同じ仕組みである。ボーイズが企画制作をし、MXが番組放映用に時間貸しをしている形だ。つまりMXは制作内容に直接タッチしていない。こうした形式はBSなどの通販番組でおなじみのやり方だ。

その制作会社のディレクターから「ニュース女子」10月14日放送分に出演して欲しいと9月末に連絡があり、題材が電通だったので、念のため「本当に出来るのか」「私が出演しても大丈夫か」と確認した。

それに対しては、「電通を題材にするのが難しいのは事実だが、この番組はDHCの一社単独スポンサーで持ち込みという体裁なので、電通から文句が来ることはない。今まで様々な企画をやってきたが、MX側からストップがかかったことは一度もない」との返答だったので承諾した。

収録日は10月6日に決まり、当日の進行台本やVTR内容表(別添)も送られてきたので、そのまま収録するものと思っていた。

◇MXの自粛で突然の番組中止

ところが10月4日の夜になって、突然「電通企画」は中止にしたいとの連絡が入った。番組収録前の最終打ち合わせでMXの編成局が、「電通を取り上げるのは絶対に不可」として強く中止を求めたとのことであった。ボーイズ側が「不正請求案件は電通自らが記者会見を開き、多くのメディアがニュースとして報じたのだから問題ないのでは」と粘ったが、MX側は「たとえ報道でも、電通を話材にすること自体がNG」として収録許可を出さなかったという。

話を聞いていると、電通から何か圧力がかかったわけではなく、あくまでMX編成局が電通との軋轢を回避するための「自主規制」であるとの印象だった。だが「VTR内容表」を見ても分かるように、別に電通を批判するような内容になっていない。

こんなことがありますけれど、本間さんはどう考えてますか、と私に全部語らせる手法になっていて、コーナー自体も10分程度である。こんな軽い内容でさえ修正させず、「とにかく電通という言葉を出すのはNG」としてコーナー自体を潰すという卑屈さにはただただ呆れた。

結局、私があちこちで指摘してきた、メディアは電通と揉めるようなことを未然に防ぐために電通批判を自粛しているという実態を、はからずも自分自身で体験することになったのだった。

◇岩上安身氏や上杉隆氏も降板

かつてMXはジャーナリストの岩上安身氏や上杉隆氏などを番組に起用していたが、今はしていない。それどころか、昨年7月に「週刊リテラシー」という番組に出演していた上杉氏に対し、何の事前相談もなく突然降板させるという暴挙を行った。上杉氏の調査では、裏で電通と五輪組織委員会からの圧力があったことが判明している。

このように、MXという局は、自由な立場で発言するジャーナリストを切り、権力を持つ電通に対してはニュースで名を流すことさえ怖がるくせに、権力を持たない市民の基地反対運動は取材もせず憶測で批判・攻撃している。このような体質のテレビ局に公共の電波を使用する資格があるだろうか。MXの大株主である東京都の小池知事の意見も聞いてみたいものだ。

■(参考資料)本間氏に送付された「ニュース女子」#79 VTR内容表」