1. 新聞を情報源とする学生は1%未満、「日本人の61%が新聞購読者」とする新聞通信調査会の調査結果と整合せず

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2023年01月03日 (火曜日)

新聞を情報源とする学生は1%未満、「日本人の61%が新聞購読者」とする新聞通信調査会の調査結果と整合せず

公益財団法人・新聞通信調査会が実施した新聞に関する世論調査によると、2020年の段階で、新聞購読率は61・3%だった。(上グラフを参照)日本人の半数以上が新聞を購読していることになる。

実感としては信じがたい数字である。読者はどう感じるだろうか。筆者が住んでいる集合住宅のポストを覗いてみても、新聞が投函されているポストはほとんどない。日本人の6割が新聞を購読しているという実感は筆者にはない。

1月1日、ヤフーニュースはジャーナリスト・亀松太郎氏が執筆した「1年で200万部減『新聞離れ』は止まらず 『一般紙』は15年後に消える勢い」と題する記事を掲載した。その中に、新聞離れの実態を示す次のような記述がある。

筆者が担当している関西大学総合情報学部の講座で2022年9月、学生146人に「ニュースを知るとき、どのメディアを最も利用しているか」とアンケートしたところ、「インターネット」が112人(77%)で、「テレビ」が32人(22%)。「新聞」と答えた学生はたった1人だった。

また、同じ講座の別のアンケートで学生128人に「週3回以上、紙の新聞を読んでいるか」とたずねたら、「読んでいる」と答えた学生は4人(3%)しかいなかった。

調査対象が若い世代に限定されているので、新聞を情報源にしている学生がほとんどいないという結果になった可能性が高いが、この点を差し引いても、日本人の6割を超える人が新聞を購読しているとする調査結果は不自然だ。新聞をPRするための世論誘導を疑わざるを得ない。

ちなみに新聞通信調査会の理事長は、日本新聞協会に所属する時事通信の西沢豊元社長である。つまり調査の公平性が担保されていない。

実は、学生の新聞購読率が極めて低いという話は、10年ぐらい前からちらほらと聞いていた。大学の先生が、学生に新聞購読の有無を聞いたところ、1%から2%ぐらいしかいないという話をよく耳にした。当時の大学生は、すでに30代になっているので、少なくとも20代、30代の世代はほとんど新聞を読んでいないと推測できる。

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亀松氏は、15年ぐらいで新聞が消滅すると予想しているが、日本新聞協会やABC協会が公表している新聞の部数には、かなり「押し紙」が含まれているので、15年はもたない可能性が高い。

新聞の衰退に伴って販売店の強制改廃が進んでいる。問題なのは、新聞社が「押し紙」で生じた新聞の卸代金を請求した上で、販売店を切り捨てることが当たり前になっていることだ。本来は、「押し紙」で生じた損害を賠償しなければならないのだが。

2023年度は、春ごろから「押し紙」裁判の判決が次々と下る見込みだ。裁判所が公正な判決を下すか注目していきたい。判決に政治判断が介入しなければ、「押し紙」問題にメスが入る可能性が高いが、三権分立が崩壊した国では、公正な判決を出させることは、そのたやすくはない。しかし、裏工作をすればするほど、新聞の信頼度が堕ち、寿命も短くなる。「電子」へ移行した後、社を再生する機会も失うだろう。