1. 新聞の偽装部数

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2013年02月20日 (水曜日)

【連載】新聞の偽装部数  新聞社と店主の合意があれば偽装部数は権利の濫用にならないという法解釈

偽装部数の程度は販売店によって千差万別で一概にはいえない。極端なケースでは、毎日新聞・蛍池販売所のように、7割を超えていた例もある。また、時代によっても偽装部数の規模は異なる。

従って偽装部数の全体像を把握する作業は後日とし、ここでは、具体的な例をひとつ取り上げると同時に、偽装部数で販売店が被る損害の相殺方法を説明する。

塩川茂生氏は1998年にYC小笹(読売・福岡市)の店主になった。2003年に廃業。その後、2006年に読売新聞社を相手に偽装部数による損害賠償裁判を起した。

結論を先に言えば、裁判は塩川氏の敗訴だった。裁判所は偽装部数の中身を「積み紙」と判断したのである。この裁判で特に問題になったのは、開業から半年の間に発生した偽装部数だった。裁判記録によると、朝刊の搬入部数と偽装部数(あるいは広義の「押し紙」)の数値は次のとおりだった。

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2013年02月19日 (火曜日)

【連載】新聞の偽装部数 「怠け者店主は詐欺すら正義だと刷り込まれ努力を放棄した。」

さて、どの程度の偽装部数(「押し紙」、あるいは「積み紙」)が存在するかを時系列に沿って年代順に紹介する前に、新聞社が主張してきた「押し紙」と「積み紙」の違いを再度確認しておこう。この点を曖昧にしておくと、「押し紙」問題の本質が見えてこないからだ。

黒薮注意:19日付け黒書で説明した「押し紙」と「積み紙」に関する内容は、PDF化したので、今後、参照にしてほしい。=「押し紙」とは何か?)

新聞社が「押し紙」は1部も存在しないと主張する場合の「押し紙」とは、彼らが定義している独自の「押し紙」の意味、すなわち「押し売りされた証拠が存在する新聞」を指している。たとえ販売店の店舗で、多量の新聞が配達されることなく余っていても、押し売りの確たる証拠が残っていなければ、「押し紙」ではない。

だから胸を張って、わが社には1部も「押し紙」はありませんと公言しているのだ。

具体的に「押し紙」裁判の場で、自社に「押し紙」は1部も存在しないと証言した例を紹介しよう。繰り返し紹介してきた例だが、新聞社が主張する「押し紙」の定義を明確に示した格好の事例なので、あえてもう一度取り上げたい。?? 読売が新潮社とわたしに対して5500万円のお金を支払うように求めた名誉毀損裁判の中で、読売の宮本友丘副社長(当時、専務)が喜田村洋一弁護士の質問に答えるかたちで証明した内容である。?? 赤字の箇所はわたしの解説である。

喜田村洋一弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所に御説明ください。

? 「30パーセントから40パーセント」の「押し紙」とは広義の「押し紙」のことである。しかし、次に示す宮本専務がいう「押し紙」とは新聞社の定義、すなわち押し売りの証拠がある新聞を指している。従って、宮本氏の立場からすれば、確かに「押し紙」は1部も存在しないという論法になる。

宮本専務:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。??

喜田村:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。??

宮本:はい。?

喜田村:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。??

宮本:はい。?? (略)

喜田村:被告の側では、押し紙というものがあるんだということの御主張なんですけれども、なぜその押し紙が出てくるのかということについて、読売新聞社が販売店に対してノルマを課すと。そうすると販売店はノルマを達成しないと改廃されてしまうと。そうすると販売店のほうでは読者がいない紙であっても注文をして、結局これが押し紙になっていくんだと、こんなような御主張になっているんですけれども、読売新聞社においてそのようなノルマの押しつけ、あるいはノルマが未達成だということによってお店が改廃されるということはあるんでしょうか。

?? 宮本:今まで1件もございません。

が、ここからが肝心な部分なのだが、新聞社が定義する「押し紙」が存在しないことが、必ずしも広義の「押し紙」、あるいは「積み紙」が存在しないということではない。事実、実配部数と搬入部数の間に大きな差異がある例が全国各地で報告されている。新聞社の立場からすれば、実配部数と搬入部数の差異は、「積み紙」ということになるようだ。??????? 参考までにYC久留米文化センター前の数値を引用しておこう。

YC久留米分化センタター前[07年11月]

搬入部数????????????????????????????????? :2010部

「押し紙」、あるいは「積み紙」  :? 997部

約50%が、「積み紙」、あるいは「押し紙」である。裁判所は「積み紙」であると判断した。広告主の立場からすれば、偽装部数である。広告主にとって、過剰になった部数が「積み紙」であろうと、「押し紙」であろうと関係ない。いずれにしても被害の温床になっている。

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2013年02月17日 (日曜日)

新連載? 新聞の偽装部数  なぜ、「押し紙」という言葉の代わりに「偽装部数」を採用したのか?

「押し紙」とは何か?  「押し紙」の定義を巡っては、2つの説がある。広義の「押し紙」と、新聞社が採用している「押し紙」の定義である。

まず、広義の「押し紙」から説明しよう。

■広義の「押し紙」

新聞販売店で過剰になっている新聞(ただし若干の予備紙は除く)を指して「押し紙」と呼んでいる。週刊誌やネットの記事で使われている「押し紙」という言葉は、広義の過剰部数を意味している。

たとえば、新聞の搬入部数が3000部で、実際に配達している実配部数が2000部とすれば、差異の1000部が「押し紙」である。

「A販売店の裏庭には『押し紙』が積み上げられている」と言う表現は、「A販売店には過剰な新聞」が放置されているという意味である。

■新聞社の「押し紙」  

これに対して新聞社にとって、「押し紙」とは新聞社が販売店に強制的に買い取らせた新聞だけを意味する。従って、強制的に新聞を買い取らせたという証拠がない新聞は、たとえ店舗に余っていても、「押し紙」ではない。

そこで「押し紙」に連座して採用している言葉が、「積み紙」である。

「積み紙」とは、新聞販売店が折込チラシの受注枚数を増やすことを目論んで、自主的に購入した過剰な新聞を意味する。折込チラシの受注枚数は、新聞の搬入部数に準じる原則があるので、「積み紙」が発生する温床があるのだ。

たとえば次のケース

実配部数             2000部

積み紙(あるいは「押し紙」)  1000部

合計       ・・・・・・・・・・・・・3000部

この場合、折込チラシの受注枚数も、原則として3000枚になる。販売店は実配部数2000部の卸代金の他に、自腹を切って1000部の「積み紙」(あるいは「押し紙」)の卸代金も新聞社に支払うが、同時に3000枚の折込チラシ収入を得ることができる。改めて言うまでもなく、このうちの1000枚は、水増しされたものである。

チラシで得る収入が新聞の卸値を上回れば、販売店は損害を受けない。ここに「積み紙」政策が成立する根拠があるのだ。

ちなみに「残紙」とは、「押し紙」と「積み紙」の総称である。

一般の人々は、このような新聞の商取引きのカラクリを知らない。そこで過剰な残紙を指して、広義に「押し紙」と呼んでいるのだ。

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