1. 新築の自宅を廃墟に、自宅の直近に無断で携帯電話の基地局を設置、化学物質過敏症が電磁波過敏症を併発させるリスク

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2016年05月04日 (水曜日)

新築の自宅を廃墟に、自宅の直近に無断で携帯電話の基地局を設置、化学物質過敏症が電磁波過敏症を併発させるリスク

新築の自宅を建てた後に、近くに携帯電話の基地局を設置され、新宅を廃墟にせざるを得なくなるケースが起こっている。筆者はこれまでに、このようなケースを2件取材した。そして今月に3例目のケースに出会った。

携帯基地局のマイクロ波による人体影響は、頭痛、めまい、鼻血、精神錯乱、それに癌などが報告されている。電磁波による健康被害は、原発による影響、たとえば旧ソ連のチェルノブイリー原発事故の後に報告されている症状と極めて類似していることが明らかになっている。

症状が類似しているのは理由がある。原発の放射線も携帯電話の電磁波(マイクロ波)も、周波数が異なるだけで、互いに同じ仲間であるからだ。欧米では両者を区別しない。

これに対して日本では、両者を区別して、マイクロ波は電磁波の一種であるから安全だという誤った認識が広がっている。それを前提に、無線通信網を際限なく拡大する国策が進行している。

◇電磁波も放射線も同じ仲間

江川町子(仮名)さんが、マイクロ波のリスクについて知ったのは、ほんの数年前だった。電磁波問題に詳しい知人から、電磁波による被害の実態やメカニズムを詳しく教えられたのである。江川さんがその内容を心に留めたのは、電磁波による健康被害について学ぶうちに、自分自身が電磁波過敏症を発症しやすい体質であることを知ったからである。江川さんは、化学物質に体が反応する体質、いわゆる化学物質過敏症だった。

この「病気」を発症した人の80%ぐらいが電磁波過敏症にもなることを知ったのである。

化学物質過敏症とは、塗料などの化学物質に身体が反応して健康を害する病気である。日本では、「病気」としては認定されていないが、海外では認定される動きが現れている。たとえば電磁波による人体影響の研究が進んでいるスゥエーデェンでは、電磁波過敏症の治療に保険が適用される。

筆者は化学物質過敏症の人を何人も取材してきた。そして発症までの過程である共通点があることに気づいた。それはある時期に極めて多量の化学物質を体内に取り込んでいる事実である。

たとえばAさん(男性)。この方は重度の化学物質過敏症である。若い頃の職歴を聞いてみると、一時期、水道の配管工をしていて、その時期に毎日のようにボンドを吸い込んでいたことが分かった。後に重度の電磁波過敏症を引き起こし、携帯電話の「圏外」への引っ越しを余儀なくされた。

江川さんの場合は、過去に新築の賃貸住宅に入居した時期があった。その新築住宅では、塗料などの化学物質が強い匂いを放っていたという。しかし、それを吸い込み続けるリスクを知らなかった江川さんは、窓を開けて空気を入れ替える程度の対策しか取らなかった。

気がついた時は、化学物質が体に反応するようになっていた。たばこの煙も耐え難いものになった。体が人工的なものを受け付けなくなったのだ。
自分が健康を害したことで、健康についてより真剣に考えるようになった。自分だけではなくて、家族の健康も気遣った。そのために2011年の原発事故の後は、一時的に東京を離れた。「疎開」先で江川さんは、知人から電磁波過敏症と化学物質過敏症の話を聞いたのである。

◇自宅の直近に携帯基地局

「疎開」から東京へ戻り、次に岡山市に永住することを決めた。岡山市は災害の少なく住みやすい都市として定評があるからだ。自宅を新築するにあたり、念入りにあたりの環境を点検した。携帯電話の基地局が近くにないかも調べた。そして自宅を建て、2年前に息子さんと一緒に岡山市へ移り住んだのである。

江川さんは平和な生活を手に入れたと思った。ところが今年の2月になって、何の前触れもなく、急に耳鳴りが始まった。耳の奥でジーンという奇妙な音が響く。自宅にいると体調に違和感があり、外出するとそれが緩和されることに気づいた。

江川さんは自分が化学物質過敏症であると自覚していたので、自宅を建てる際も、化学物質を含んだ塗料などは使っていない。それにもかかわらず自宅にいる時に、身体に異変が起こるようになったのである。

原因がわからないまま、耳鳴りはどんどん悪化した。そのうちに冷蔵庫の音までが気になりだした。特に夜中になると、静寂のなかで、その音が不快な金属音のように脳に刺さった。ブレーカーをoffにしても同じだった。

「どこから音が来るのだろうか」

悩ましい日々が続いた。

それから数日後、江川さんは自宅から10メートルほどの所にある3階建てマンションの屋上に携帯電話の基地局が立っているのを発見したのである。自宅からは死角になって見えないが、少し場所を変えるとはっきりと見えた。

◇自宅を廃墟にする悲劇

4月に入って江川さんは、一旦、東京に戻った。化学物質過敏症なので、岡山市の自宅にいたのでは、電磁波過敏症を併発するリスクが高かったからだ。あるいはすでに電磁波過敏症になっている可能性もある。

電話会社に岡山市の自宅近くの基地局を撤去してもらえなければ、江川さんは新築したばかりの自宅を捨てざるを得ない。電磁波問題を隠して自宅を売却する気持ちにもならない。

江川さんのケースのように、自宅の直近に基地局が設置されて、自宅を廃墟にせざるをえない事例は、今後、ますます増え続ける可能性がある。が、電磁波問題は電話会社の利権が絡んでいるので、メディアは報じない。

今や水面下の大問題の様相を呈し始めている。