1. 遺伝子毒性が指摘されている携帯電話の電磁波(3)、日本の基準値「1000μW/c㎡」に対して、EUは「0.1μW/c㎡」

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2015年04月29日 (水曜日)

遺伝子毒性が指摘されている携帯電話の電磁波(3)、日本の基準値「1000μW/c㎡」に対して、EUは「0.1μW/c㎡」

さて、海外でマイクロ波の人体に対するリスクが懸念されている状況の下で、日本の総務省の方針を検証してみよう。まず、マイクロ波の規制値を国際比較してみる。

日本:1000μW/c㎡

カナダ:1000μW/c㎡

ロシア:100μW/c㎡

イタリア:10.0μW/c㎡m

スイス:6.6μW/c㎡

EU:0.1μW/c㎡(提言値)

ザルツブルグ市:0.0001μW/c㎡(目標値)

読者は、「μW/cm(マイクロワット・パーセンチ)」という用語にこだわらずに、著しい数値の違いに注目してほしい。日本の基準値「1000」、に対して、EUは「0.1」、ザルツブルグ市は「0.0001」である。

しかし、EUの数値でさえも安全とはいえないとする専門家の報告もある。たとえば世界の著名な研究者がまとめた「バイオイニシアチブ報告・2012年度版」は、次のようにマイクロ波の危険性を指摘している。

「2007年以降、携帯電話基地局レベルのRFR(無線周波数電磁波)に関する5つの新しい研究が、0.001μW/c㎡から0.05μW/c㎡よりも低い強度範囲で、子どもや若者の頭痛、集中困難、行動問題、成人の睡眠障害、頭痛、集中困難を報告している 。」(監修:荻野晃也、訳:加藤やすこ)

日本の基準値である1000μW/c㎡は、箸にも棒にもかからない数値である。

なにがこのように著しい数値の違いを生むのだろうか。結論を先に言えば、枝葉末節はあるにしろ、マイクロ波に遺伝子毒性が「ある」とする立場を取るのか、それとも「ない」とする立場を取るのかで、数値の違いが生じるのだ。

◇「熱作用」と「非熱作用」

マイクロ波による人体影響は、「熱作用」と「非熱作用」という分類もできる。「熱作用」とは、加熱のことである。マイクロ波を使う電子レンジにより食品を加熱することが出来るが、その際に生じる現象が加熱作用である。

当然、人間が電子レンジのマイクロ波で照射されたら、「調理」されたのと同じ状態になる。こうした状況を避けるために設置された基準値が日本の総務省が決めた1000μW/c㎡である。

これに対して「非熱作用」とは、「熱作用」以外の影響を言う。その代表格は既に述べたように遺伝子に対する毒性である。遺伝子毒性は、バイオイニシアチブ報告でも判明したように、極めて弱いマイクロ波でも生じる。

それゆえにマイクロ波に「非熱作用」があることを前提に、基準を定めれば、
ザルツブルグ市の0.0001μW/c㎡のように低い目標値になる。「非熱作用」がないことを前提に基準を定めれば、日本のように1000μW/c㎡といった数値になるのだ。

◇安全基準のトリック

しかし、実際に日本の電話会社が1000μW/c㎡レベルのマイクロ波をまき散らしているかといえば、これも事実に反している。例外はあるにしても、1W/c㎡を下回るかなり低い数値で操業しているのが事実である。

その上で低い数値を逆手にとって、自社のPRに利用したりする。たとえば
1W/c㎡で操業して、「弊社は総務省の基準の1000分の1で操業していますから、絶対に安全です」などと宣伝する。

しかし、マイクロ波に「非熱作用(遺伝子毒性)」があるとすれば、ザルツブルグ市の0.0001μW/c㎡あたりを基準にしなければ、健康被害が生じるリスクがあることになる。たとえ1W/c㎡であっても、安全とは限らないのである。

改めて言うまでもなく、発癌などの被害が発生した時期は、特定のしようがなく、裁判で損害賠償を求めても、勝ち目はない。