1. 同じ脈絡の携帯基地局問題と原発問題、チェルノブイリの被害報告から察する電磁波の影響

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2014年04月11日 (金曜日)

同じ脈絡の携帯基地局問題と原発問題、チェルノブイリの被害報告から察する電磁波の影響

原発には反対だが、携帯電話の基地局設置には反対しないという人が少なからずいる。その典型的な人物は、ソフトバンクの孫正義氏である。孫氏は「3・11」のあと、はやばやと原発に見切りをつけて、それを代用する新しいエネルギーの開発へ、第一歩を踏み出した。

しかし、「原発には反対だが、携帯電話の基地局設置には反対しない」という孫氏の立場は、電磁波による人体影響という観点からすると論理が破綻している。携帯基地局が発生源となるマイクロ波も、原発が発生源となるガンマ線も、同じ電磁波(放射線)の仲間である。前者のエネルギーが低く、後者のエネルギーが高いという違いはあっても、電磁波による人体影響という観点からすれば、いずれも電磁波問題である。

その電磁波が誘発する人体影響として、とかく癌がクローズアップされる傾向があるが、癌は数ある病変のひとつに過ぎない。電磁波によりどのような人体影響が現れるのかは、チェルノブイリの原発事故の後に報告されている被曝者の体調変化が参考になる。

 『チェルノブイリ被害の全貌』(アレクセイ・V・ヤブロコフ他 岩波書店)には、原発事故の後、確認されているがん以外の疾患につて次のように要約している。

(略)脳の損傷がリクビダートル(事故処理作業員)や汚染地域の住民とその子どもたちなど、放射線に直接さらされた人びとに見られた。若年性白内障、歯と口の異常、血液、リンパ、心臓、肺、消化器、泌尿器、骨および皮膚の疾患によって、人々は老若を問わず苦しめられ、健康を損なわれている。内分泌系の機能障害、とりわけ甲状腺疾患の広がりは予想をはるかに超え、甲状腺がんが1例あれば甲状腺の機能障害は約1000例あるというほど、大惨事後に著しく増加している。??

遺伝的損傷と先天性異常が、特にリクビダートルの子どもや、放射性同位体によって高濃度に汚染された地域で生まれた子どもに認められる。免疫異常と、ウィルス、細菌、および寄生虫による疾患が、重度汚染地域に蔓延している。チェルノブイリ事故によって放出された放射線に被曝した人びとの総罹患率は、20年以上にわたり依然として高い。??? ?

◇白内障から橋本病まで

ここで報告されている人体影響の一部は、携帯電話の基地局周辺で観察される体調不良とも重なっている。わたしが取材を通じて確認した人体影響のうち、引用部数と重複するものとしては、次のようなものがある。

白内障、不整脈、アトピー、皮膚のかゆみ、甲状腺の異常。

このうち白内障は、兵庫県川西市で起こったNTT基地局を撤去させる運動を取材する中で確認した。住民の一人が白内障が悪化して、手術を受けている。基地局が設置されたあと、白内障が急激に進んでいるので、マイクロ波が原因だった可能性が否定できない。

不整脈は複数確認しているが、たとえば重症の電磁波過敏症になった長野県伊那市の塩田永さんは、自宅ちかくにNTT基地局が立った後、繰り返し頻脈を体験している。

皮膚の疾患については、基地局周辺の住民から頻繁に聞き取っている。特に珍しい症状ではない。

甲状腺の異常については、知人の娘さんが、自宅近くに基地局が立った後、橋本病(慢性甲状腺炎)と診断されている。

しかし、これらの症状の原因は、電磁波だけとは限らない。そのために電磁波の人体影響についての認識を持たない人々は、電磁波以外の原因を推定する傾向がある。それが電磁波問題が表面化しにくい大きな要素になっているのだ。

特に大都会では、近隣とのコミュニケーションが乏しいので、体調の変化を自分だけの特異症状として処理してしまい、住民が結束して基地局を撤去させることを困難にしている。