1. 携帯電話の電磁波問題で何が危険視されているのか?欧州と日本の見解の違いとは

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2014年04月10日 (木曜日)

携帯電話の電磁波問題で何が危険視されているのか?欧州と日本の見解の違いとは

携帯電話やスマートフォンの普及が進むにつれて、携帯電話の基地局が増えている。会社から帰宅すると、自宅のそばに携帯基地局が立っていたといった話があとを絶たない。笑うに笑えないブラックユーモアである。

それに伴いMEDIA KOKUSYOにも携帯電話の電磁波(マイクロ波)とは何かという問い合わせが寄せられようになった。

電磁波とは、ごく簡単に言えば電波のことである。その電波とは、電気を空間に飛ばしたものである。電波はアンテナから発せられて、アンテナで受信される。アンテナがなければ、利用価値はない。

固定電話では、ケーブルを通じて情報が送られてくるが、携帯電話では、電波を通じて情報が送られてくる。

ちなみに電磁波の「電」とは、電気のことで、「磁」とは磁気を意味する。「波」は文字通り波。つまり電磁波とは、磁気を帯びている電波の性質をより正確に定義したものである。それゆえに単純に電磁波=電波と考えても、許容範囲といえる。

しかし、電磁波の存在はなかなか認識するのがむずかしい。肉眼で知覚することができないからだ。色もなければ、音も匂いもない。ビルの屋上から街を見下ろして、目の前の空間を電波が飛び交っているイメージを描くひとは、ほとんどいない。

これに対して、たとえば風は目には見えないが、街路樹が揺れたり、桜が花吹雪となって散る光景をまえにすると、風が客観的存在であることを認識できる。

が、認識の壁が、客観的存在を否定することにはならない。マイクロ波が携帯基地局と「電話器」の間に介在しなければ、携帯電話で通話できない事実は、情報を運ぶマイクロ波が客観的存在であることを物語っている。そのマイクロ波を生物、特に人間が被曝した際に現れる負の人体影響が、新世代公害?電磁波問題としてクローズアップされているのだ。

◇マイクロ波は放射線の仲間

さて、一口に電磁波と言っても、さまざまな種類のものがる。携帯電話の通信に使われるマイクロ波だけではなく、X線やガンマ線も電磁波である。と、すれば電磁波の種類は何によって分類されているのだろうか。

結論を先に言えば、それは周波数である。電波は、矢のように一直線に飛んでいるわけではない。波を打ちながら空間を進む。その波が1秒間に上下動する回数を周波数と呼び、「ヘルツ」、あるいは「サイクル」という単位で表される。

電子レンジで使われる電磁波(注:電磁波の分類ではマイクロ波)は、2500メガヘルツである。これは1秒間に25億回というとてつもない数の波が発生していることを意味する。もちろん、このような現象を肉眼で確認することはできない。 ? ちなみに携帯電話の通信に使われるマイクロ波の周波数は、第3世代携帯電話で2000メガヘルツである。電子レンジとほぼ同じだ。「携帯電話が脳を調理する」というブラックユーモアが生まれたゆえんにほかならない。

PFDの図は電磁波の分類である。改めて言うまでもなく、周波数が高くなれば、エネルギーも高くなり、周波数が低ければエネルギーも低くなる。?? エネルギーが高い電磁波のうち身近なものの代表格は、X線やガンマ線である。

X線はレントゲンに利用され、ガンマ線は癌の放射線治療に利用されている。X線やガンマ線は、医療現場で利用されているが、危険な側面があるので、医療人による厳密な管理下に置かれている。

ちなみに日本では、X線やガンマ線など周波数が高い電磁波を放射線と呼び、それ以外の比較的エネルギーが低いものを電磁波と呼んで区別しているが、欧米ではこのような区別はない。すべての電磁波は、放射線の仲間である。

電磁波による人体影響について考える場合、電磁波を2分類すると分かりやすい。電離放射線と非電離放射線である。

◇電離放射線とは?

電離放射線とは、X線やガンマ線など高いエネルギー(周波数)を持つ電磁波のことである。電磁波研究の第一人者・荻野晃也氏は、電離放射線を次のように説明している。

 太陽よりもエネルギーの高い電磁波のことを「電離放射線」というのですが、物質(人間の身体も含めて)を作っている分子や原子に含まれる電子をはねとばすほど(その現象を「電離」といいます)エネルギーが高いからです。日本ではそのような「電離放射線」を「放射線」と定義しています。これらの電磁波はエネルギーが大変強いために、細胞や遺伝子などの分子や原子をバラバラにしてしまって、その結果として発ガンの原因になったりするわけです。(『健康を脅かす電磁波』緑風出版)

これに対して非電離放射線とは、文字通り電離作用がない領域の電磁波を意味する。携帯電磁のマイクロ波もこの領域に属すと考えられてきた。日本政府や電話会社が、携帯電話の安全性を主張する根拠でもある。

しかし、最近では全ての種類の電磁波が人体に影響を及ぼすリスクがあるとする説が有力になっている。これに関して、荻野晃也氏は、『携帯電話基地局の真実』の中で、次のように述べている。

これらの電磁波のうちで、原爆の被爆者・被曝者などの研究から、「電離放射線が特に発ガンの危険性が高い」と思われてきたのです。ところが、最近の研究の進展で「電磁波全体が危険な可能性」があり、「共通した遺伝的毒性を示す」と考えられるようになってきたのが、現在の「電磁波問題」の本質だといってよいでしょう。

◇あまりにもお粗末な日本の電波規制値

既に述べたように電離放射線が危険なことは定説となっている。  現在、争点になっているのは、非電離放射線に属する電磁波(携帯電話のマイクロ波、家電や電線の低周波電磁波)などが有害か否かという点である。

政府と電話会社は、非電離放射線の人体影響を過小評価した上で、電波の安全基準を設けている。これに対して欧州は、非電離放射線にもリスクがあるという前提で、電波の安全基準を設けている。

その結果、マイクロ波の規制値についていえば、欧州と日本の安全基準には次のような信じがたい差が現れている。

日本:1000μW/cm(マイクロワット・パー・センチ)

EU:0・1? μW/cm

ザルツブルグ市の目標値:0.0001μW/cm

非電離放射線に人体影響があると考えるか、ないと考えるかで、安全基準にこれだけ大きな差が生じているのだ。かりに非電離放射線に人体影響があるという説が定まった場合、いたるところに基地局がある日本はパニックに陥る可能性がある。

それでも電話会社のために、厳しい規制値を設置しないのが日本政府である。

ちなみに世界保健機関(WHO)傘下の世界ガン研究機関(IARC)は、2001年に極低周波に、2011年5月にはマイクロ波に発癌性がある可能性を認定している。つまり非電離放射線も電離放射線も、人体に影響を及ぼす可能性があると考えているのだ。

なお、電磁波による人体影響は癌のリスクだけではない。それはほんの氷山の一角に過ぎない。それはチェルノブイリでどのような被害が発生したかを踏まえれば明らかだ。