2013年11月22日 (金曜日)
目黒区八雲の基地局問題が解決 NTTドコモが計画を断念
老人ホーム「グランダ八雲・目黒」(東京都目黒区八雲)の屋上に携帯基地局を設置する計画を進めていたNTTドコモが、10月の中旬に中止を決定して、目黒区役所に報告していたことが分かった。しかし、住民に対しては通知しておらず、企業コンプライアンスを疑問視する声が広がっている。
ドコモと住民の間に基地局の設置をめぐる係争が持ち上がったのは昨年の秋だった。しかし、住民側の合意が得られなかったために、基地局を設置する計画は、ペンディングになっていた。
ところがNTTドコモは7月ごろから、再び設置に向けて動き始め、8月のお盆明けに、基地局を設置することを住民に通知した。これに怒った住民たちは、本格的な反対運動を展開するために、「携帯電話基地局設置に反対する八雲町住民の会」を結成して、住民運動に乗り出した。
電磁波問題の専門家を招いて、電磁波についての学習会を2度開催した。学習会への参加を呼びかけるために、宣伝カーも走らせた。基地局問題で住民側が宣伝カーを使った例は、わたしが取材した範囲では、はじめてである。
◇区議たちの活躍
「住民の会」は、基地局の設置を規制する条例制定を区議会に提案した。これを受けて保守系から革新系まで党派を超えた議員がトラブルの解決へ動きはじめた。そして、非公式の話として、NTTドコモが10月31日までに、計画を断念することを条件に、条例の陳情を取り下げるという案が浮上した。
しかし、住民たちはこれを拒否。基地局の設置計画が中止になるまでは、条例案を取り下げない方針を貫いた。
進展がないまま11月に入った。住民たちは、非公式の話として、NTTドコモが計画を中止したことを議員を通じて知った。そこで電話でNTTドコモに問い合わせたところ、計画を断念したことを告げられたのである。
その際、住民側はNTTドコモに、計画の中止を住民に知らせるチラシを配布するように要請した。しかし、ドコモはこれを拒否した。
「計画中止はウソではないか」と不信感をいだいた「住民の会」は、代表が区役所へ足を運んで、事実関係を確認した。その結果、10月9日の4時半ごろNTTドコモ大田分室の担当部長が目黒区役所に現れ、都市計画課の課長と係長に面談し、計画の中止を報告していたことが分かった。
次に紹介するのは、「守る会」が情報公開制度を利用して入手したNTTドコモと目黒区都市計画課の面談を記録したメモである。タイトルは、「NTTドコモ携帯電話基地局現況について」となっている。
(「NTTドコモ携帯電話基地局現況について」=ここをクリック)
◇新たな内容証明を送付
基地局の設置問題は決着したが「守る会」は、NTTドコモが同会宛に計画中止を通知しなかったことを問題視している。11月19日には、同会の協同代表3人の名前で、改めて通知を求める内容証明を送付した。
なお、条例については、議員との約束を尊重して一旦取り下げたが、再提出される可能性も残されている。「守る会」の中には、幼児を持つ人々も多く、電磁波が子供に与える人体影響を考えたとき、これ以上、基地局を設置させないことが不可欠であるからだ。
個人こじんの考えや心情が微妙に異なるために、とかく住民運動はまとまりにくいと言われている。しかし、目黒区のケースでは、「基地局を立てさせない」という共通した目標で住民が一致した。それが勝因となった。
■冒頭写真:長野県木曽町の基地局近くで現れた奇形のナスビ。本文とは関係ありません。