1. 東京・目黒区の「住民の会」が区議会議長宛てに陳情書、超党派の議員が住民を支援 NTTドコモによる携帯基地局設置の問題で

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2013年08月29日 (木曜日)

東京・目黒区の「住民の会」が区議会議長宛てに陳情書、超党派の議員が住民を支援 NTTドコモによる携帯基地局設置の問題で

東京都目黒区八雲町にあるベネッセ経営の老人ホーム「グランダ八雲」の屋上にNTTドコモが携帯基地局を設置する計画が浮上しているなか、地元の住民らでつくる「携帯電話基地局設置に反対する八雲町住民の会」は、8月26日、目黒区の橋本欣一区議会議長に対して、陳情書を提出した。陳情の内容は、次の3点である。

1、グランダ八雲への携帯基地局設置について、NTTドコモが住民説明会を開催するように区からドコモに対して指導すること。

2、住民の合意を得ないうちは、工事を着工しないようにNTTドコモに対して区から指導すること。

3、区議会として、今後、基地局設置をめぐる電話会社と住民のトラブルを回避するための方法を検討すること。

携帯基地局の設置をめぐる電話会社と住民のトラブルは、2011年にWHO(世界保健機構)の傘下にある国際癌研究機関(IARC)が携帯電磁波を含む高周波電磁波に発癌性がある可能性を認定して以来、全国各地で急増している。しかし、目黒区のケースでは、電磁波問題だけではなくて、健康に不安を持つ高齢者の集合住宅の上に基地局を設置してはばからない電話会社の倫理観にも批判が集まっている。

自民党や民主党の目黒区議もこの問題を重大視しており、住民を支援する方向で動いている。目黒区議会で議題になる可能性が浮上している。

携帯基地局をめぐる電磁波問題は、中央政界でも超党派で住民を支援する動きがあり、山谷えりこ議員(自民)、大河原まさこ議員(民主)、紙智子議員(共産)らが、質問主意書を提出している。中央の流れが、そのまま地方に波及する流となっている。

【参考サイト】

?●山谷えりこ:ホームページ 

●大河原まさこ:ホームページ

●紙智子:共産党機関紙

◆ ドコモに対しては再び内容証明

また、「住民の会」は、8月27日、事前にNTTドコモの加藤薫社長に対して送付していた申入書の回答を催促するための内容証明を送付した。住民側とNTTドコモの間で、電話による交渉は行われたが、文書による回答は、8月29日時点では到着していない。

ちなみに「住民の会」が事前に加藤社長に送付していた申入書の内容は、住民説明会の開催と、住民の合意を得ないまま基地局を設置しないことの2点である。

◆陳情書の全文  

陳情書は次の通りである。

 現在、NTTドコモが目黒区八雲3丁目4番21号にある老人ホーム・グランダ八雲の屋上に携帯電話の基地局を設置する計画を進めています。基地が稼働した場合、わたくしたち周辺住民は、基地局が365日24時間発する電磁波による健康被害の発生を強く懸念しています。

 携帯基地局から発せられる電磁波による人体影響については、2011年5月に世界保健機構(WHO)の傘下にある国際がん研究機関(IARC)も、携帯電磁波を含む高周波電磁波に発癌性がある可能性を認定しました。

また、バイオイニシアティブ・ワーキング・グループ(著名な14名からなる電磁波の人体影響の研究や公衆衛生の政策に関する専門家の集まり)が2013年に、従来の勧告値(0.1μW/?)よりも更に低い、0.0003〜0.0006μW/?という厳しい値を勧告しました。これに対して日本の電波防護指針では、2GHz(主に第3世代携帯電話で使用されている) に対して1000μW/?で、想像を絶する開きがあります。

これは日本の規準が、携帯電話や電磁レンジで使われる高周波電磁波による人体影響の評価について、加熱によるダメージだけを考慮し、加熱以外のダメージ(遺伝子の破壊など)はほとんど発生しないという前提で設定された結果にほかなりません。

しかし、日本全国さまざまなところで、携帯基地局周辺の住民の間に、耳鳴り、不眠、鼻血といった症状が現れ、宮崎県延岡市のように健康被害を理由に住民30名が提訴に踏み切った事例もあります。残念ながら、電磁波による健康被害が発生するリスクがあるという認識が定着していません。

そのため携帯電磁波で体に障害は発生しても、北里研究所病院など、一部の医療機関を除いて、その原因を特定できるとは限りません。その結果、対策が取られないないまま、問題が放置されているのが実態です。

この社会問題は、今後、新しい「公害」として、一刻も早く対峙しなければなりません。

 繰り返しになりますが、電磁波に関する日本の安全基準は、欧米と比べて、きわめて緩やかなものです。また基準値を設定する段階で、基礎資料の根拠となった研究そのものが何十年も前の古いものであるうえに、公害で最も重視される疫学調査を十分に取り込んでいないなどの問題があることも指摘されています。

広範囲で長期にわたる人体影響の懸念が払拭できない場合や、住民が選択の余地なく公害の影響下に置かれるようなケースでは、予防原則にもとづいた対応と、住民への十分な説明、それにコンセンサスの形成が必須だと考えます。公害と健康被害の因果関係が医学的に立証されるまで、携帯基地局の操業を続けることが許されるのであれば、高周波電磁波を被爆する住民は、モルモットということになります。

 基地局設置には住民の健康被害を誘発しかねないこれだけ、大きなリスクが伴うにもかかわらず、NTTドコモは、昨年10月付の形式的な文書による工事内容と日程の通知をおこない、工事について問い合わせた集合住宅■■■の理事会(数名)への説明会はおこなったものの、同集合住宅のその他の住民や一戸建ての住民を対象とした説明会は開いていません。当然、地域住民も基地局の設置には合意していません。

わたしたち地域住民で作った「携帯電話基地局設置に反対する八雲町住民の会」は、八雲地区全体の住民を対象とした説明会の開催を要求していますが、NTTドコモ側は、8月26日の時点では、開催に応じていません。こうした状況の下、わたしたち住民は、工事の強行を警戒して、強いストレスを募らせています。

一度基地局が設置されてしまうと、近隣住民は365日24時間たえず携帯電磁波を浴びて生活することになります。ホームのお年寄り方はもちろんのこと、携帯電話やスマートフォンを利用しない、胎児や赤子、小さな子どもたちも被害を受けます。彼らは外出の機会も少なく最も携帯電磁波の被爆を受ける層です。特に若年層への人的影響を懸念しています。

消費者、ユーザーの利便性のみを優先するのではなく、真に社会的な公共性の観点からも、住民への十分な説明と了解のないままの基地局設置は許されません。このようなことを続けていては、未来世代にまでわたって持続可能な地域社会を作ろうという住民の意欲は失われ、真に民主的かつ共同的な社会は実現できなくなってしまいます。

地域住民とNTTドコモとの間のトラブルを回避するために、わたしたちはNTTドコモに対して基地局設置に際しては、住民説明会を開催して、同意が得られないまま基地局設置工事に着工しないことを求める次第です。

陳情事項 1.グランダ八雲への携帯基地局設置について、NTTドコモが住民説明会を開催するように区からドコモに対して指導をしてください。

2.住民の合意を得ないうちは、工事を着工しないようにNTTドコモに対して区から指導をしてください。

3.今後、基地局設置をめぐる電話会社と住民のトラブルを回避するための方法を検討してください。

◆ドコモに対する回答要請の全文

8月27日付けでNTTドコモの加藤薫社長に宛てた内容証明の全文は次の通りである。

貴社宛平成25年8月8日付弊内容証明郵便参照。本書状に貴社が計画している「グランダ八雲」の屋上に携帯電話基地局設置に関し、多くの地域住民の強い要望に基づき貴社に対し、トラブル回避の観点より住民への説明会の開催及 び住民の合意を得ずして工事を強行せぬよう強く要請しました。

然るに貴社からは本日に至るも何らの返答も無く、担当部署に問い合わせたところ、当方の書状は書面による回答を求めていないので文書による返答をする必要は無いとの発言がありました。

貴社のごとき大企業の担当者が、かかる発言をすることは極めて誠意を欠くものであり、誠に遺憾であると言わざるをえません。当方が要請した二点に関しては、ドコモとしての見解を文書にして回答することは最低限の企業責務であると思料します。

私達「携帯電話基地局設置に反対する八雲町住民の会」には、その後も多くの地域住民より設置による健康不安を訴える声が届いています。

これらの住民の声に対して、貴社として誠意ある対応を改めて強く求めるものであり、今回の当方書状に対しては、9月5日迄に貴社の返答を要請致します。