1. 老人ホーム屋上に基地局設置(神戸)、 原発のガンマ線と携帯電磁波の接点

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2013年08月26日 (月曜日)

老人ホーム屋上に基地局設置(神戸)、 原発のガンマ線と携帯電磁波の接点

【取材ノート】  このところ携帯電話の基地局問題を取材している。  8月は長野県と兵庫県で起きているケースを取材した。このうち神戸市の東灘区では、NTTドコモが老人ホームの屋上に携帯基地局を設置して、周辺住民との間でトラブルが発生している。しかも、アンテナの数は、わたしの観測に間違いがなければ、6本。

すぐ近くには子供ホームがある。老人ホームがなだらかな山の斜面に立っている関係で、ホームよりも高い位置にある民家や集合住宅の中には、アンテナの高さと窓の高さがほとんど同水準になるものもある。

ちなみにNTTドコモは、東京目黒区でも、老人ホームの屋上に基地局を設置する計画を進めようとしている。現在は、住民の反対で計画がストップしているが、今後、NTTドコモがどのような方針を取るかは不明だ。

◇原発問題と基地局問題は同じ ?

携帯電磁波の問題を報じる場合、その危険性をどう説明するのかという課題が付きまとう。電磁波の専門家に話を聞いてみると、原発のガンマ線やレントゲンのエックス線との関連で、マイクロ波(携帯電磁波)の危険性を説明すると分かりやすいという。

日本では放射線と電波は、別のカテゴリーに分類されている。大半の人々は、両者を厳密に区別している。これが携帯電磁波の問題を深刻に受け止めない風潮を生みだした最大の要因かも知れない。

周波数とは、電波のビートを数える単位である。配電線を流れる電波の周波数は、東日本では1秒間に50(回)サイクル、西日本では60サイクルである。これらは極めて緩やかなサイクルである。

これに対して電子レンジで使われるマイクロ波は、1秒間に約25億サイクルである。これにより熱を発生させるのである。ちなみに携帯電話(第3世代)の周波数もほぼこの領域に属している。

マイクロ波よりもさらに周波数が高くなったものとしては、紫外線、エックス線、ガンマ線がある。つまりガンマ線もマイクロ波も、周波数が異なるだけで同じ仲間にほかならない。周波数の違いで名称が異なっているのだ。

ただ、日本ではガンマ線やエックス線などを「放射線」と呼び、それよりも周波数の低い領域のものを「電波」と呼んでいる。両者は仲間である。

ちなみに携帯電話のマイクロ波は、「電波」として分類されている。

放射線と呼ばれている領域の電波(電磁波)に、遺伝子を破壊する作用があることはかねてから周知の事実となってきた。福島原発で作業員が線量計を着けて普及作業を行うのは、放射線の危険性が常識として定着しているからだ。

「放射線=危険」の認識は、すでに定着している。

ところが最近になって、放射線と呼ばれていない領域の電磁波にも、遺伝子を破壊する作用があるのではないかという説が有力視されてきたのである。事実、2011年、WHOの傘下にある国際癌研究機関は、マイクロ波(高周波電磁波)に発癌性の可能性があることを認定した。

◇総務省の電波防護指針はデタラメ  

次に示すのは、高周波の電磁波に対する防護指針の比較である。日本の数値とザルツブルグ(オーストリア)の数値(目標値)は次のような開きがある。

日本:1000μW/ cm2

ザルツブルグ:0.0001μW/ cm2

ちなみにバイオイニシアティブ・ワーキング・グループ(著名な14名からなる電磁波の人体影響の研究や公衆衛生の政策に関する専門家の集まり)は2013年、従来の勧告値(0.1μW/ c?)よりも更に低い、0.0003?0.0006μW/ cm2という厳しい値を勧告した。

欧米と日本でなぜ、これほど歴然たる数値の違いが生じているのだろうか?答えは簡単で、日本では放射線と呼ばれていない領域の電磁波には、遺伝子を破壊する作用はないという学者の説を採用しているからだ。

どちらの説が正しいのか、まだ、最終結論は出ていない。それにもかかわらず、日本では、次々と携帯基地局が設置されている。政府は歯止めをかけようとはしない。いわば基地局周辺の住民に、マイクロ波による人体影響を検証するための「人間モルモット」になるように強要しているのとあまり変わらない。

それが嫌なら自費で引っ越しなさいという論理である。