2022年05月08日 (日曜日)
NHK『所さん!事件ですよ』、携帯基地局にまつわる事件をボツに プロデューサーは「電磁波問題はタブーではない」と弁解
NHK総合が放送する「所さん!事件ですよ」を制作する(株)テレビマンユニオンが、携帯基地局からの電磁波による健康被害を考える番組を中止したことがわかった。当初、担当ディレクターは、被害者を紹介するよう依頼し、筆者は4人の被害者を紹介したが、4人が取材を受けることすらなかった。ディレクターに事情を尋ねたところ、基地局の仲介業者からストップがかかったことを明かした。一方、プロデューサーは、「もともと電磁波による健康被害が取材目的だったのではなく、基地局設置工事の騒音被害を取材することが目的だった」などと、不自然な説明を繰り返した。筆者が、業界タブーがあるのではないかと尋ねると、「それは絶対にない」と強く否定。タブーという趣旨でこの問題の顛末を記事化することは不本意とも述べた。
【Digest】
◇電磁波問題を報じる欧米のメディア
◇電磁波問題は巨大ビジネスの障害
◇基地局に関する6本の記事
◇「番組の概要を添付します」
◇私が紹介した4件のトラブル
◇「NHKは関係がなく、ぼくらの取材が進まなかった」
◇NHKに対する問い合わせ
◇「原稿を入稿する前に読ませてほしい」
◇マスコミが報じない問題こそ報道価値が高い
「報道の自由度 日本 世界71位 “大企業の影響力 自己検閲促す”」と題して、NHK自身が、パリに拠点を置く国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」による報告書(2022年5月3日)の内容を報じている。世界180カ国・地域を対象とした調査結果である。
日本は韓国やオーストラリアと同様に「強まっている大企業の影響力がメディアに自己検閲を促している」として去年から順位を4つ下げて71位に後退しました。(2022年5月4日)
時事・日経も報じている。本件は、この「自己検閲」についての実態を示す「報道」である。
なお、協力を依頼してきた取材を担当するプロデューサーが、入稿前に「原稿を読ませてほしい」と言ってくるなど、ジャーナリズムの倫理が恐ろしく欠落したテレビ関係者の実態も明らかになった。私の視点からすれば、そもそもジャーナリズムではない。
2022年4月11日、私は(株)テレビマンユニオンのディレクターから1本の電話を受けた。自社が制作している「所さん!大変ですよ」(NHK総合)(4月から改題、「所さん!事件ですよ」)で、携帯電話の基地局設置をめぐるトラブルを取り上げる予定なので、取材対象者を紹介してほしいという。NHKがこの問題を取り上げれば、その影響力は計り知れない。断る理由はなかった。
基地局設置に伴う電磁波問題は、水面下で深刻になっているが、トラブルの発生源である携帯電話会社がマスコミの大口広告主という事情もあって、この話題を積極的に取り上げようというマスコミは皆無といっても過言ではない。
電磁波問題を扱った書籍は若干出版されているが、ベストセラーにでもならない限り、電磁波が新世代公害として広く認知させることはない。その意味で、NHKと連動した(株)テレビマンユニオンの試みは画期的だと思った。